PINKのおいらロビー自治スレ3

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294ほのぼのえっちさん
あかりをつけましょ ぼんぼりに。

【日本カレンダー・三月】

今日は嬉しいひなまつり。
別段行事に興味があるわけでもないけれど、お祭り事はなんとなく心が弾む。
女の子が主役お祭り。女の子は皆お姫様。勿論そこにはアタシも含まれる。
そう、今日の主役はアタシなのだ。

「なんだか嬉しそうですね。」

日本さんは茶葉を取り替えながら微笑みかける。
「アタシはお姫様だー!」なんて考えていた事は気恥ずかしくて言えず、
誤魔化すようにエヘヘと笑い返した。

「田中ぁ、今日はゲームとか本は持って来なかったの?」

こにぽんがチョロチョロとアタシの荷物の少なさに首をかしげている。
いつもの田中なら、こにぽんにはこれがオススメだよー!なんて
可愛い絵柄の漫画を持ってきてくれたりするのになぁ、と
残念そうな表情を浮かべている。そんな様子も可愛らしいやら申し訳ないやら。

「今日はひなまつりだよ、こにぽん。」

ポケットからジャラリとそれを取り出すと、
興味深そうにこにぽんの目がキラキラと輝いた。

「たまにはアナログな女の子ゲームも、乙じゃない?」

ビー玉、おてだま、いろはカルタ。
白いお皿に散らばる雛あられは、アタシが持ってきたおはじきに似ている。
試しにぴんと指ではじくと、お菓子らしい軽い感触。
きっとアタシが形作られる前に流行したはずの遊びは
その記憶が無くとも、懐かしく感じるのは何故なのだろう。

「なんだか嬉しそうですね。」

さっきと同じように、もう一度。確かめるように日本さんは私を見た。
彼女には参った。そう言えば日本さんは、アタシを一度も田中とは呼ばなかった。
きっと、最初から気付いていたんだね。

「敵わないなぁ……」
「ふふ、私いつも、あなたのような方々の相手をしていますから。」

「ねぇ、日本さん。ありがとう、楽しかったよ。
 最後に一つ、お願いしてもいいかなぁ。」

翌日、犬神神社の木の下を掘り返すと
小さな雛人形が一体埋められていた。
このあたりに住んでいる誰かのイタズラだったのだろう。
鬼子は折り紙でお内裏様を折り、元の場所に埋めなおした。

そんな、三月の思い出。