「・・・何処を通って来た・・・か。色々調べているみたいだな。
俺は、闇世で200年ほど色んな民を喰らい続けてきた。
最近光の世に来たが、それでも50体くらいは喰ってるなぁ。」
人型の輩は、話をたぶらかしているみたいだ。
それを聞いた般若の目がさらに厳しくなる。
「・・・何処かの川を・・通って来た・・・のだな!?」
人型の輩は、目で般若を睨み、鼻で般若の何かを読み取ろうとしていた。
「お前は・・・鬼娘の守護者・・・・・・では無いな・・」
そう言葉をかけられた般若は無言だった。
輩がまた話しだす。
「お前の力は、この輩と同等くらいか・・・」
これ以上の詮索を拒むかの様に、その輩が指を【チョン】と前へ出す。
すると狼の様な輩が、不意に般若を襲い始めたのだ。
【ズバーン】
一瞬にして砕け散る輩。般若は動いた気配がなかった。
人型の輩が少し下がりながら、般若を睨み言った。
「お前・・・何者だ・・。いや・・・元は何の民だ・・」
ヒワイドリも、遠くにいる音麻呂達も・・身体に非常に強い殺気を感じている。
詠麻呂が自分の身を抱きしめながら言った。
「い・・痛い・・。身体が痛い」
音麻呂が皆を抱きしめながら言う。
「あ・・あいつの・・・。人型の輩の殺気が・・俺達の身体を痺れさせているんだ・・。
は・・般若さんからも殺気は感じるけど・・・大きさが違いすぎる・・・」
ヒワイドリは未だに目を覚まさない鬼子の近くで、同じ殺気を感じていた。
「は・・・般若・・。あ・・あんたの力でも無理だ・・・。お・・俺達・・もう・・・」
般若を睨みつける人型の輩。その輩が、そおーっと右手を上げ鬼子達が居る所を指差した。
「少しは早いみたいだが、俺の動きには付いて来れんだろう。お前が言う様に、俺は
元々猿の民だ。色んな民の中でも飛びぬけた瞬発力を持っているからな。
お前の目の前で、あの鬼娘の力・・・喰ってやるわ」
そう言い、人型の輩は鬼子達の方へ一瞬にして飛んで来た。
般若は・・・やはりその動きに付いていけずにいた。
人型の輩の大きな爪が鬼子達を襲う。ヒワイドリは、身構える動作さえ出来なかった。
【ギュイィーーーーーーーーーーーーーーーーーン】
人型の輩の腕が、後ろへ弾かれネジ曲がる。
般若が腕を弾いたのだ。遠くにいた般若が・・・。
「ヒワイドリ、2人を担いで直ぐに結界の中へ!」
焦るヒワイドリは、息を止め、鬼子と秀吉を担いで結界の方へと走って行った。
とても醜い形相で、般若を睨む人型の輩。
「・・お・・・お前・・・」
般若の額に、薄っすらと光る文字が浮き出ている。
人型の輩がそれを見て、自分の顔の前に両手を持ってきた。
何か・・・黒く光る小さな文字が輩の手の中に浮かび上がる。
そして般若を見下ろしながら笑い、言った。
「お前は・・鬼の民なのか・・・」
黒い文字を浮かべる輩を見た般若は、目を見開く。
【あぶない】と思ったのだ。
般若は、ヒワイドリの方を見て叫んだ。
≪「速く結界の中へ入るんじゃーーーーーー!」≫
そう言い終わると、般若の額の文字が光輝き出した。
【ブヮアーーーーーーーーーー・・・】