ジリジリと後ろへ下がる鬼子と秀吉。そして秀吉が鬼子に言った。
「あの這いつくばってる方の輩の攻撃パターンは解ったかい?」
「はい、大体は。あの大きな爪でしか攻撃してきませんから」
秀吉は、もう一体の輩の方を見た。
「じゃぁ後は、あの手足の長い輩の攻撃パターンが解れば、何とかなるかもしれないね。
僕があの輩と対峙するから、鬼子ちゃんはその攻撃パターンを良く見ておくんだよ」
そう言い少し前へ出る秀吉。鬼子はその秀吉の肩に素早く手をやった。
「だ、駄目です。危険ですよ・・・。秀吉さんは相手の力を利用して倒すんでしょ!?
なら、あの手足の長い輩には不利なんじゃぁ・・・」
鬼子のとても不安そうな顔つき。秀吉はその鬼子の顔を見ながら微笑んだ。
「さすがだね!良く見てる。僕の弱点も解ってるなんて凄いよ。
でもね、今君は、肩で息をしているだろ。その状態で突き進んでも解決策は見つからない。
僕は、自分の身が危なくなったら一度後ろへ下がるから、それまではその目で
相手のパターンと弱い所を読み取ってくれるかな。それと、体力を回復させといてね」
「わ・・・解りました・・でも・・・」
鬼子の表情はまだまだ不安そうだ。秀吉は、人差し指を立てて笑顔で鬼子に言った。
「頼んだよ。これから光の世を守っていかなくちゃいけないのは僕じゃなく、鬼子ちゃんなんだ。
その鬼子ちゃんには、もっともっと強くなってもらわなくちゃ。ね!」
そう言って、秀吉は輩の方へと飛び込んで言った。
≪「ひ・・秀吉さーーーん」≫
手を伸ばし叫ぶ鬼子の指先越しに、秀吉の姿が小さくなっていく。
手足の長い輩を一言で言うならカマキリのようだ。
秀吉がカマキリの様な輩の近くに行った時、鋭いその長い手が飛んで来た。
それをしゃがんで避ける秀吉。そして素早くその輩の真下へと潜り込んだ。
お腹の様な部分に、力一杯拳を振り上げる。
【ドグッ】
少しヨロめく輩だが、長い足が横から飛んで来た。
秀吉はすかさず状態を反らす。目の前をかすめ飛んでいく輩の足。
とっさに、秀吉は輩の前に出て飛び上がった。
そして、秀吉の右足が空間を裂く様に輩の顔めがけて飛んでいく。
【ガツーーーン】
輩の首が捻じ曲がる。
「いけるか・・・」
秀吉がそう思った瞬間、背中に熱い激痛が走った。
中を舞いながら振り向くと、そこにはさっきまで横たわっていた熊の様な輩がいた。
その輩が、秀吉の背中をえぐったのだ・・・。
【ゥグッ・・】
秀吉は・・地面に膝を付き、倒れ込んでしまった・・・。
それを見ていた鬼子の赤い目がさらに大きくなり、一瞬にして髪の毛が【ブワッ】と逆立つ。
凄まじい速さで駆け込む鬼子。その目には秀吉しか映っていない。
立ちはだかる二匹の輩の間に素早く入り、秀吉を抱きかかえてその場を飛び出して行った。
鬼子は右足で地面を蹴ると同時に、秀吉をその場に置き、
身体を反転させて、今度は輩に向かって突進して行った。
秀吉の身体の周りは、小さく光るもみじの葉っぱで覆い尽くされている。
輩に飛び込んでいく鬼子の表情は、怒りに満ちている。
激しく光り輝く薙刀が、動きの鈍い熊の様な輩を切り裂いた。
≪「萌え散れー!」≫
●挿絵2
http://pinktower.com/loda.jp/hinomotooniko2/?id=736.jpg 大きく叫ぶ鬼子。その鬼子めがけてカマキリ型の輩の長い手が飛んで来た。
鬼子はその手を避けようとしない・・・。頬をかすめ、鬼子の頬を切り裂いた。
しかし、鬼子は瞬き一つしない。かまわず、そのまま突進する鬼子・・・。
鬼子の表情は・・獣のようだ。