−ここはとある都会にある電気街。都会の空気に馴染みそうにない、和服姿の少女が一人。
駅の改札口で時計を何度も気にしながら待っていた。その文字盤は…まだ九時を指している。
鬼子『…凄い所。みんな色んな想いが渦巻いてるみたいだけど、大丈夫なのかしら?』
見渡す街には「心の鬼」とまではいかないが、多少の黒い感情や集中した白い感情が鬼子の目には見えていた。
田中『ごめんね〜!待ったでしょ?』
後から、改札を抜けた田中さんが声をかける。
鬼子『いえ、大丈夫です。それで…ここで何をするんですか?どこかに潜んでいる鬼を祓うとか…?』
田中『ちょっと、何もしないってば!ただ遊ぶだけ。行きましょう』
そういうと、鬼子の手を取り、人ごみの中へと入っていった。
第十四話:初めての友達
(注:私は秋葉原に行った事がありません。モデルはあの街ですが、表記は絶対本物を表現し切れていないかと)
街中を歩くと、鬼子は帽子が取れないかどうか必至に気にしている。人ごみに押されて今にも外れそうだ。
田中『何やってんの?その帽子、取っちゃって良いよ?』
鬼子の返事を聞く前に帽子を取ってしまう。昔は小さなお面で隠せていたが、大きくなってくると高い麦藁帽の様な帽子で隠していた。
慌ててもう一度被ろうとするが、その手を田中さんが止める。
田中『大丈夫、大丈夫よ、この街では。周りをよく見てご覧よ。もっと変な格好をしている人達が沢山居るから』
人々に見えた想いの渦にばかり囚われていた鬼子は、姿や格好までに目がいってはいなかった。
よくよく見てみると、冥土姿、何か西洋中世の格好に似た姿や、髪を様々な原色系に染めた者までいる。
鬼子『…ここは、不思議な街ですね。なぜこんな奇天烈な格好をしてらっしゃるんですか?』
田中『みんな自分の好きな事に正直だからじゃない?基本的にここで表現されてる趣味はオタクだ何だと世間一般に嫌われてるから…。
でも、鬼子さんみたいなコスプレをしてる人も多いから、ここなら何も気兼ねなく遊べるでしょ?ね?』
突然提案して、何も考えていないと見えてもきちんと考えて場所を選んでいた様だ。その気遣いに鬼子も少し笑顔を見せる。
鬼子『…有難うございます、田中さん。いつも私は怖がられると思っていました』
田中『匠でも良いよ。良かった、気に入ってくれたみたいで。じゃあ悪いけど、最初に本屋さんへ寄って良い?』
鬼子『はい、大丈夫ですよ。何処へなりともお供いたします』
本屋へ立ち寄ると、色々な本が並ぶ中で普通に春画や男色本のあるコーナーへと立ち寄る。
周りに並ぶ本を見て、顔を赤らめる鬼子に対して水を得た魚のように色々と物色する田中さん。
田中『ちょっとこれとこれ持っててくれる?』
鬼子の手に本をヒョイヒョイ手渡すが、その表紙はやはりある程度露出の高い女性ばかり。
ドンドン顔を赤らめる鬼子に対して、最終的に十冊位集めた田中さんは満足げにレジへと向かう。
鬼子『あ、あの…本当にコレをこんなに沢山買うんですか?!』
田中『そ〜よ〜。買うだけじゃなくて自分でも書くんだから、資料資料。後で私が持つから大丈夫よ』
結構な値段になったが、平気な顔で全てお買い上げして、そのまま本屋を出る。