「鬼子ちゃん見て!ほら、錫杖がすこ〜し振動してるでしょ。これって、山の自然の力が
私達の問いかけに反応してくれてるのよ。この山の木々や大地が生きている事を実感出来るって、
すっごく興奮しない!?だ〜からやめられないのよね〜山伏って!」
「へぇ〜山が生きているっていままで考えた事無かったから、不思議で不思議で」
鬼子の表情は笑顔だった。鬼子の心を和らげるのは、秀吉より詠麻呂のほうが、
一枚も二枚も上手のようだ。
鬼子達の前の方から声が聞こえて来た。
「お〜ぃ」
手を振っているのは、一番近くに居た音麻呂だった。
その音麻呂が笑顔で手を振っている。
「あれ?鬼子ちゃんも居たの!?奏麻呂の近くにいたんじゃぁ」
「はい、走り飛んで来ました!」
「え・・?は、速いね・・。とても・・・」
音麻呂はかなりビックリしている。鬼子の位置は、ヒワイドリアクセで読み取っていた。
かなり遠くにいた奏麻呂の所からここへこんなに速く走って来たなんて・・・。
その時突然、音麻呂と詠麻呂が手に持っていたヒワイドリアクセから急に痛みが走った。
【鬼子!】
般若の声が聞こえた。
【バッ】
っと飛び出していく鬼子。
みんなに伝わった痛みとは・・・。
・・・歌麻呂の痛み・・・。
森の中を凄まじい速さで駆け飛ぶ鬼子。
その姿は、角が少し光ながら鋭くなり、着物からもみじが大量に舞い散っている。
薙刀は光輝き、そして・・・目は見開き、赤黒く染まったその瞳からは・・・涙が溢れていた。
投下終り。
「日本鬼子・ひのもとおにこ」〜第十二章〜【ヒワイドリの怒り】に続く。