次の日の朝、お寺の庭先で出発の準備をしている皆の姿がある。
鬼子は、いつもの様に自分の角にヒワイドリアクセサリーを着けようとしていた。
出かける前の癖になっているようである。
鬼子の頭に着いてる般若面は、一言鬼子に言う。
「鬼子、今はその変てこなアクセサリーは要らんのじゃないか」
「あ・・そ、そうね。ついいつもの癖で・・・」
その様子を見ていた山伏装束の奏麻呂が鬼子に近づいて来た。
「あ〜そのアクセ着けないなら私に貸してよ!鬼子ちゃんが着けてていいなぁ〜って思ってたの」
奏麻呂の意外な趣味?ファッションセンス??なのだろうか・・・。
奏麻呂は鬼子からそのヒワイドリアクセを貸してもらい、自分の髪の毛に着けた。
その様子を見ていた音麻呂と歌麻呂はお腹を抱えながら涙を流し、無言で笑っている・・。
「さ〜いくぞ!おまえら!!俺様に付いてこい!」
と大声を張り上げながら歩いて行くのはヒワイドリである。
皆は、ヒワイドリと正反対の方に歩いて行った。
ヒワイドリが焦りながら言う。
「おぃおぃ、お前等何処にいくんだよ」
すると鬼子が答えた。
「そっちは南の方角よ・・・」
その様子を見ていた鈴木ちゃん(お爺さん)はケラケラ笑いながら手を振って
みんなを見送っている。
お寺を出ると、辺りは直ぐ薄暗くなる。
朝陽は照り付けてるのだが、日差しが高い木々にさえぎられ、地面まで届かないのだ。
「よ〜し」
と音麻呂が言いながら、腰に掛けていた法螺貝(ほらがい)を口にくわえた。
【ブオォ〜ン、ブオォ〜ン】
とその法螺貝を力一杯吹いた。
音麻呂、歌麻呂、詠麻呂、奏麻呂の4人は、その場にジッとして動かない。
法螺貝の音が鳴り止んでから少し経った。
「う〜んやっぱり反応なしか。錫杖(しゃくじょう)が響かない・・・
やっぱり俺達4人は、別れて行動した方がいいな」
音麻呂がそう言うと、鬼子が直ぐに近づいて来た。
「え・・別れてって、危険ですよ。皆一緒に行動しなくちゃ・・・」
「いいや、この広い山で一箇所に固まって法螺貝を吹いていてもそう簡単に悪しき輩を
見つける事は出来ないだろ。それなら散らばって色んな方面から法螺貝を吹いて、
山の反応を探らなくては意味ないからね」
「で・・・でもそれじゃぁ危険すぎます・・・」
鬼子の頭の上で般若面となっている般若がしゃべる。
「そうか、お主等のその力は多方面の方が力を発揮する・・と言う事じゃな」
それに音麻呂が答える。
「はい。危険なのは解っていますが、無意味に時間を費やすよりいいと思います」
すると、般若面が白いお餅を伸ばしたような般若の姿へと変わり、地面に降りた。
「奏麻呂とやら。お主が頭に着けとるアクセサリーをちょいとワシにかしておくれ」
「え?こ、この可愛いアクセを?」
「そ・・・そうじゃ」
般若は奏麻呂の独特の感性に驚きながら、そのヒワイドリアクセサリーを受け取った。
「な、何するの?」
と鬼子は般若に聞く。
「ちょぃ見とけ」
と般若は言いながら、両手を前に出しそのアクセに念を送っている。
すると、一瞬そのアクセが輝き、そしてまたすぐ消えた。
「これをお主等4人がそれぞれ持つんじゃ。何かあった時、お主等の念をこのアクセに込めると
その位置がすぐ解るし言葉も交わせる。ワシにも、鬼子にも、お主達にもじゃ。
それと、音麻呂と歌麻呂は一人で行動じゃ。気をつけるんじゃぞ。
詠麻呂には秀吉が付け。奏麻呂にはヒワイドリじゃ」
4人はヒワイドリアクセをそれぞれに分けて渡し、袂に入れた。
鬼子と般若面。音麻呂。歌麻呂。詠麻呂と秀吉。奏麻呂とヒワイドリ。
この5組がそれぞれ違う方向へ歩いていった。