歌麻呂(男)は鬼子の方に向いて話した。
「俺たちの音楽活動の原点は祝詞(のりと)なんだよ。神に捧げる歌や舞をしてた時に
なんかこう、ピーンときてね。人の心を和らげるって言うか、癒すって言うか。
笑ったり怒ったりも表現出来るから、今の俺たちにとても合ってるんだよ。
さっき、鬼子ちゃんが悪しき輩の居場所が解らないって言ってたよね。俺たちにもすぐ
その居場所が解るかって言えば無理だと思う。でも、自然の力を借りれば何とかなるかもしれない」
「し、自然の力・・ですか?」
「そう。何かを探す時は、神主、陰陽師の力ではなく山伏の力の方が勝ってるからね。
特に山の力を借りて探してみるよ」
鬼子の耳には聞きなれない言葉だ。山伏、陰陽師、祝詞・・・。そう言う神職が
光の世にはあるのだ。
「皆さんは、必ず私が守ります。だから安心して下さい」
鬼子のその言葉に、歌麻呂は呆れ顔だ。
「いや、俺たちは大丈夫だよ。自分の身くらいは自分で守るよ」
「いえ・・・本当にとても強い輩みたいなんです。
皆さんに怪我でもされたら・・・必ず守りますから。」
「ハハ・・。大丈夫だって、そんなに守る守るって言ってちゃぁ自分の事も守れなくなっちゃうよ」
そんなやり取りをしている所に、音麻呂(男)が中のマイクを通じて話しかけてきた。
「歌麻呂〜詠麻呂、奏麻呂〜。ちょっと中に入ってきてくれ」
音合わせの打ち合わせ中だと響社長は言っていた。鬼子達は彼らの邪魔をしないように
この場で待つことにした。
すると、音麻呂(男)が中から初めて出てきた。
そして、目の前の機械をイジっている。何かのボタンを押したようだ。
「鬼子ちん!ガラス越しに鬼子ちゃんを観察してたんだけど、
俺たちと同じように、すごく頑固だね〜。気が強いって言うか優しすぎるって言うか。
そんな鬼子ちゃんを見て今作った曲があるから聞いていってよ!」
「え・・?」
と、あっけに取られている鬼子と秀吉。
その2人を置いて、音麻呂はまた中に入って行った。