秀吉は、そのヒワイドリを手で隠す様に押しのけながら言った。
「初めまして、鬼狐神社に仕える秀吉と言います。貴女が狐火様から紹介された方でしょうか?」
「いいぇ、違うわ。私はここの事務所の社長よ。社長兼神主だけどね。響って言うの。宜しく〜」
「あ・・・宜しくお願いします」
その響社長はガラス張りの中にいる人達を指差しながら言った。
「紹介されてるのは、あの子達よ」
手前に三人。そのまた奥にガラス張りの部屋があり、その中に一人。
「今、新曲の音合わせ中だけど入っていいわよ」
響社長はそう言いながらガラスの扉をあけた。すると、中では心地のいい音楽が流れている。
「あっ!」
鬼子が目を見開き、焦りながらその人達に指をさしている。
「ぁあ〜・・・金色のビルの看板の人達〜〜〜!」←第五章参照。
秀吉も驚き、唾を飲み込んでいる。
「あぁ・・・テレビに出てる人だ・・・」
その言葉を聞いた響社長は、キョトンとした表情で言う。
「あれ?聞いて無かったの?彼等は歌手よ〜」
「歌手!?」
「そう。中で一人音あわせしている男の子が音麻呂で、手前にいる男の子が歌麻呂。
2人一組のグループで唄ってるわ。そして、手前にいる女の子2人、茶髪の子が
詠麻呂で金髪の子が奏麻呂よ。彼女達も2人一組のグループなの〜」
「知ってます、見たことあります。テレビにもよく出てますよね」
秀吉が目をキラキラさせながらそう言った。
「そう。最近人気が出てきてね、彼らが作る曲っていい曲なのよ〜ん」
響社長は両手を掴み、腰を振りながら満面の笑顔になっている。
「入っていいわよ〜ん!」
秀吉は、響社長の揺れる腰に誘われながら中に入って行った。鬼子も付いて行ってるが。
ヒワイドリは鬼子により、中には入れてもらえなかった。
中にいる女性二人と響社長に悪さをしてもらいたく無いからだ。
見た事の無い空間に圧倒されながら、鬼子が挨拶をする。
「こ、こんにちは。初めまして、ひのもと鬼子と言います」
「ぼ、僕は秀吉です」
歌麻呂(男)と言う人が2人の言葉に返事をしてくれた。そして、鬼子の方を見た。
「あぁ〜よく来たね!君の事聞いてるよ。闇世の鬼の民なんだってね。初めて見たよ〜。
可愛い顔してるから君なら絶対売れるよ〜。俺は歌麻呂。宜しくね。」
歌麻呂はニコニコ笑顔で手を振りながらそう答えた。
すると、その横にいた茶髪の詠麻呂(女)が歌麻呂(男)の背中を【ポン】と叩きながら言う。
「違うでしょ!力を借りに相談に来てるんだから。ね、鬼子ちゃん!」
鬼子は少し引きつった笑顔で返事をする。
「は・・・はい」
「私は詠麻呂。宜しく〜」
詠麻呂(女)も手を小さく振りながら挨拶した。
鬼子も少し焦りながらまた挨拶をする。
「あ・・よ、宜しくお願いします」
奏麻呂(女)が鬼子と秀吉の手を引いて言った。
「まぁまぁ立ち話もなんだから、座ってよ。私は奏麻呂よ。宜しくね」
またまた、鬼子と秀吉は挨拶をする。
「宜しくお願いします」
音麻呂(男)と言う人は、もう一つのガラス張りになった部屋の中で、ピアノを弾いているみたいだ。
音合わせ中と言ってたから、その作業中なのだろう。
中から手を振ってくれているので、鬼子は頭をチョコンと下げて挨拶をした。
ヒワイドリは・・・ガラス張りの部屋の外で、口に指を入れながらこちらの雰囲気を
うらめしそうに覗いていた。
歌麻呂(男)は、自分の前の機械のつまみを、鬼子達には見えない様にしながらスライドさせた。
そして、鬼子達の方に向き笑顔で言った。
「で、その鬼の民の子が俺たちに相談って何かな?」
「は、はい・・。実は・・・」
と鬼子はココに来たいきさつを丁寧に全て話した。