大都会。近代的なビルしか立ち並んでいない。こんな所にその人間の民がいるのか。
人が溢れかえり、肩をぶつけながら歩く人々。そんな中、秀吉は片手にメモを握り締め
片手でハンドルを握り締め、ユックリと車を進めていた。
そのまま小さな細い路地を入っていく。少し進むと人の波もまばらになり、静まり返った所に出てきた。
「あっ、ここだ!」
と秀吉は5階建てのビルの前に車を止めた。
そのビルの前に駐車スペースがあるので、そこに車を止めなおした。
鬼子達は車を降り、ビルの看板を見上げた。
【HIBIKI STUDIO】ヒビキ・スタジオと書いてある。
小さな玄関を入ると、階段と小さな電話だけがある空間。そして階段の手前には鉄格子が施している。
秀吉は番号をクルクル回すレトロな黒電話に目をやった。その横に何か書いてある。
【御用の方は受話器を取り、○○番まで】
秀吉は受話器を取り、○○と回した。
【トゥルルルル〜・・・】
呼び出しているが、中々出てくれない。その横で、ヒワイドリが鉄格子をこじ開けようと
【ガシャガシャ】やっていた。
「ハァ〜ィ。どちらさん?」
とやけに色っぽい声が受話器から聞こえてきた。
「あっ、鬼狐神社から来た者です」
「あぁ〜早かったのね!ちょっとまってね。柵の鍵を開けるから。
階段登って二階まできてくれる?じゃぁね」
【ガチャン】
と受話器が切れた。それと同時に
【ポーン】
と言う音が柵の鍵の所から聞こえてきた。どうやら、鍵が開いたようだ。
「うす汚い所だなぁ」
ヒワイドリが裾を少し上に上げながらそう言った。
【キッ】とヒワイドリを睨んで鬼子が言う。
「あんた、言葉を慎みなさいよ!」
階段を上がって行くと、なにやら音が聞こえてくる。秀吉は、その音が聞こえてくるドアを開けた。
すると、ガラス張りのぶ厚いドアがもう一つある。その向こう側では、誰かが何かをしているようだ。
横に有る階段から誰かが降りてきた。
「あ〜ら。良くいらしたわね〜ん」
その色っぽい声の主は、見た目20代前半の女性。とても色っぽく見える。
髪型は茶髪のセミロング、そして白いシャツを着ているのだが、
そのシャツをむやみに、そして力強く持ち上げる胸・・・。
鬼子はそれを見て・・・呆然としている。
秀吉も違う意味で呆然としているが。
【シュッ】
ヒワイドリがその女性の横に素早く動いた。
「ち、」
【プスッ】
鬼子が素早く、ヒワイドリのお尻に薙刀を刺す。
そんな鬼子とヒワイドリの無言のやり取りを他所に、その女性が鬼子の腕に手を添えた。
「あなたが鬼子ちゃんね!か〜わいぃわね」
「え・・あ・・あのぅ・・・」
「解ってるわ。連絡があったから」
そう言いながら、その女性はセミロングの髪の毛をユックリかき上げた。
薙刀がお尻に刺さっているヒワイドリが、その女性の髪の毛の香りを
【クンクン】
と心地良さそうな笑顔で匂っている。