PINKのおいらロビー自治スレ3

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233ほのぼのえっちさん
遠くで鳴く小鳥のさえずりが鬼狐神社まで、響き渡る冬の日。
裏庭に、少し大きい車が止まっている。8人くらい乗る事が出来るバンタイプの車だ。
この車は、他の神社の神主や、お客さんを送迎する為に鬼狐神社が保有している車。
今は朝8時くらい。この車に荷物を詰め込む秀吉と鬼子の姿があった。
昨日の晩、ヒワイドリの呪縛の解読を途中で抜けてきたきび爺ときび婆。
それに、鬼子と織田、秀吉、般若の6人で話しをしたのだ。
力を持つ人間の民に協力してもらい、今回ハチ太郎が遭遇した力の強い
悪しき輩を見つけ出す。そして、散らす事を。
秀吉と鬼子はその準備をしている所だ。
きび爺、きび婆、弥次さん喜多さん。それに織田と舞子が2人を心配そうに見つめている。
きび婆が鬼子の方に近寄ってきた。
「鬼子・・あんまり無茶はせんでおくれよ。深追いは禁物じゃて」
「解ってるわ。心配しないできび婆。それに皆も。私は大丈夫よ」
鬼子は笑顔でそう答えた。
織田が秀吉の方に近寄って来て小声で伝える。
「おぃ秀吉。鬼子ちゃんが無理しそうな時は、お前が止めるんだぞ。
 鬼子ちゃんに怪我させたら承知せんからな!」
秀吉は織田のその言葉に、深くうなずいた。
「解ってます。任せて下さい」
秀吉は口を真一文字にしてそう織田に答えた。
車に乗り込むのは、鬼子、秀吉、般若。それに今朝方やっと呪縛の解けたヒワイドリ。
秀吉が運転席に乗り込み、鬼子は助手席に乗り込む。般若は般若面となり、
鬼子の袂に入れられている。そしてヒワイドリアクセ付きカチュウシャを頭に・・・。
ヒワイドリは・・・徹夜明けで爆睡中だ。織田がそのヒワイドリを後部座席に放り込んだ。
きび爺が2人に声をかける。
「絶対に無理するんじゃないぞ。気を付けてな」
秀吉が、運転席の窓を開けみんなに挨拶をしている。
「じゃぁ行ってきます。皆さんも気を付けて」
鬼子も助手席の窓から皆に声をかけた。
「行ってきます。こにぽんに宜しく伝えて下さい」
こにぽんははだ寝ている。傷を負ったハチ太郎と、徹夜明けの般ニャーとともに。
そして、車は静かに走り出し鬼狐神社から消えて行った。

鬼子と秀吉。そして般若と爆睡中のヒワイドリを載せた車が高速道路を走っている。
鬼子は窓から見える外の景色を、寂しげな表情で見つめていた。
「鬼子ちゃん。車に乗るの初めてだよね。どう?走るより早いだろ!?」
秀吉は、鬼子の沈んだ表情を気にかけているのだ。
「ん〜・・・。私の方がもう少し早いかな」
今、車は時速80キロで走っている・・・。
「え・・・このスピードより早く走れるの・・・?」
「・・うん。でも、早く走れても輩のいる場所は解らない・・・」
秀吉は、輩とは違う話題にしようとしているのだが、鬼子の頭の中は
やはり、心の鬼からなる悪しき輩で一杯なのだろう。
「・・・そ、そうだね。早く走れてもね・・・。ハ・・ハハハ・・・」
秀吉の話しは撃沈される・・・。
一時間ほど田舎風の郊外を走っていたが、所々ビルも目立つようになってきた。
神社近くの風景とは全く違い、近代的なビルが立ち並ぶ。
後部座席ではまだヒワイドリが寝ている。呪縛が解けて直ぐ眠り込んでしまったのだ。