世の中で、もっとも無駄に飯を食っている職業は、哲学者と言われている……というのを、倫理の授業で聞いたことがある。
物事を考えている“だけ”の「仕事」は、結局のところ人様の役に立ってはいないのだ。
『下手な考え 休むに似たり』――つまり、どれだけ高尚であっても役に立たなきゃNEETと同じ。
では、大学時代に蓄えたその知識をひとまず置いておいて、他のテキトーな文系学生と同じく、
企業の営業として働くことになるのだろうか。
営業は、僕には無理だろうと思う。
なにより、身につけた知識を活かせていない。
やりたいことを勉強していたら、いつの間にかそれを活かせる職業が見つかって、その職に就く。
自分の興味あることを勉強し、それで得た知識やスキルを活かして仕事をし、生計を立てていく。
それで適材適所、丸く収まる……。
就職情報誌や進路指導室は、そういう情報は与えてくれない。
『この学部に行ったらこの職業!』というような、選択の余地を与えない記事ばかり。
世の中に、就ける『ジョブ』は限られているように思える。
そのジョブに就くために、有利な学部を選択する必要がある。
でも、どのジョブにも魅力を感じない人がいたら……
どうしたらいいんだ?
テレビを見ていると、実に多くの肩書き、つまり職業についている人たちがいる。
〇〇研究家だとか、△△プランナー、××アドバイザー。
彼らは、自分の得意を職業にしている感がある。
まさしく『ジョブ』だ。
……けど、それで食っていけてるのだろうか?
この、『食えるかどうか』というのが、実に厄介だ。
結局のところ、それを考えて進路を決めなきゃならない。
『大学に入れば、好きなことだけ勉強できる』なんて、嘘っぱちだ。
好きなことを勉強したって、就職できなきゃ意味が無い。
それも、『食っていける』職業に、だ。
「まーたブツブツ言ってるし。キモいんだけど」
さっきから微かに感じていた冷たい目線の正体は、にっくき我が妹だったりする。
「だから、勝手に入ってくるんじゃねぇって言ってんだろ」
「和英辞典どこ?」
聞いちゃいない。
コイツは、世界が自分のためにあると、本気で思ってるに違いない。