PINKのおいらロビー自治スレ3

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213ほのぼのえっちさん
4時限目の授業が終わり、理科室から戻る途中、ナギサワと一緒になった。
偶然にも僕も彼女も当番に当たって、授業の後もガスバーナーやらビーカーやらを片付けていたのだ。

ナギサワは……今日は束ねた髪を纏めて左肩に垂らしている。

今まで気づかなかったのだけど、彼女は毎日髪型を微妙に変えている。
ポニーテールにしても、高い位置で噴水みたく (この喩え、伝わるかどうかとても自信がない) 散らしている時もあるし、
やや低い位置で房を垂らしている時もある。

「サイトウくん、この前進路指導室に行ってたね」

特別教室棟の廊下を並んで歩いている時、ナギサワが言った。

――見られてた?
僕は平静を装いつつ、少しばかり動揺していた。

「呼び出し食らった?」
いたずらっぽく笑って、僕を見る。

「はは……まぁ、そんなとこ」
曖昧に笑って、やり過ごす。

何だか、そこに出入りしていることを知られたくないような気がした。
知られたところで、どうにもなりそうにないけれど。


「進路、決めた?」
ナギサワは、さらに追い打ちをかけてくる。今の僕が、もっとも聞かれたくない類の質問だ。

階段を降りる。
一日中日陰なせいで、ここだけ冷房が効いたようにひんやりと心地いい。
あと何日かで、夏休みだ。
夏休みが終わったら……本格的に、進路決定をしなくちゃならない。

正直言って、考えたくない。

「……悩んでる。どうしたらいいんだろ。この前のテストもイマイチだったしさ」
冗談っぽく笑って返す。

「わたしもだよ。なんていうかさ、『もうちょっと考える時間ください』って言いたくなっちゃう」

渡り廊下に差し掛かる。
凶暴さを増す太陽光が、容赦なく気温を上げている。

うわ、暑っ! などと口にしながら、僕たちは歩いている。