青ミイラと化した懐はアゲルとノビルの二人に担がれ運搬されていた。
さすが肉体を追求する連中だけあり、懐の身体的特徴を見抜いたが、知識が偏っている為に懐には何を言っているかよく解らない。
その後ろではととろとロニコがとことこ付いていた。
ととろはついでに仲良しの葱に会いに行こうと思っていたのだ。
そして、部室の前に到着。成す術なく拉致された懐の心境は察するに余りあるが、現実は冷たく。「演劇部」とかかれた標札が堂々そこにある。
「もがもがもが……!」
「もう諦めろって。迫先輩〜。ご注文の品でぇ〜す!」
ドアが開く。出迎えたのは当然、迫である。
「よくやった。そして、ようやく捕まえたぞ……懐」
「ぐもももも……!」
「ああもう。そんな嫌がるなよ……」
「あの、俺とノビルはどうすれば?」
「ああ、あとはこっちに任せてくれ。例のモノは後日改めて届けよう……」
「了解。まいどあり。撤収!」
走り去る重量挙げ部の面々。取り残された青ミイラ。それと珍しいリボンの女の子。
見下ろすは眼鏡をかけた男子生徒一人。
「ぐるるるる〜……」
「唸るなよ。別に捕って食うわけじゃ無いんだし……」
そう言いながら、ずるずると奥へと懐を引きずる。中に居るのは当然演劇部の皆さん。あと客が一人。ととろはそれに見覚えがある。
「あ、亮太さんだ」
「おや、久しぶりだね」
身長二メートルの大男再び。
寝そべる懐が見たのは、宿敵、迫先輩に葱とあかねの演劇部。そして、薄情にも付いて来たととろと、最近復学したばかりという空知亮太という男。
一体何事か? そう思ったがぐるぐる巻きにされて身動き出来ない懐には何も出来ない。
「わーい葱ちゃ〜ん」
「わーい近森先輩」
実は葱もカップルウォッチングのメンバーである事実を知る者は少ない。が、それ故か二人は仲がいい。
あかねも加え、さっそくお喋り開始。
「このおバカを捕まえてどうするの?」
「さぁ? 私もよくわかりません。それより酷いんですよッ! 懐先輩は私を見る度にネギネギネギネギって……!」
「いつも捨て台詞はそれなんです」
「なにそれ酷い! 謝んなさいよこのバカ!」
「もがもが……(今どうしろと……)」