バスケットボールの如く懐をアゲルへとチェストパス。キャッチしたアゲルは背後から羽交い締めにし、動きを殺す。
「こ……この野郎! 二人がかりとはスポーツマンシップのかけらも無い!」
「大変なんだよ俺達も。プロテインだけならまだしも、BCAAにEAA、グルタミンにクレアチンにコンドロイチンに……」
「……なんだその物質は……?」
「まぁそういう訳だ。覚悟しろ懐」
「ノビル……。それは、ホームセンター等でお馴染みのトレ用品、セ○バンド(青)!」
「そうだ。このセラ○ンド(青)で縛りあげてやろう」
「やめろ! 強度高めの○ラバンド(青)で俺を拘束するな! うわゴム臭ぇ!」
「はっはっは。往生際の悪い奴め」
「や……やめてぇ!!!」
※ ※ ※
「あ〜あ。捕まっちゃった」
「こんな事しなくても普通に呼べばいいと思うんですけどね」
「まぁバカが三人集まるとこうなると」
懐が蹂躙されている様子を見つめていた乙女二人。ととろとロニコ。
アゲルと衝突し、懐捕獲作戦を少し聞いたととろはひょこひょことアゲルについて行き、その様子を一部始終みていた。
が、その様子はもはや滑稽。助ける気にもなれない。仮になったとしても肉塊二つが相手ならば最初からどうにもならないのだが。
「あのバカがこうも簡単にやられるとは」
「正直ここまで簡単に引っ掛かるとも思いませんでしたけど……」
「で、どうするのアレ」
「演劇部の部室に拉致するとか」
「あちゃー。よりによって天敵の所か。まぁ、面白そうだからついて行くけど」
「意外と薄情ですね」
「そうかな?」
二人が話している間に、懐はセラバン○(青)によって青いミイラのようになっていた――。
※ ※ ※
「おやぁ〜? 懐君、キミは珍しい体型だねぇ」
「肩から腕が発達しやすいようだねぇ。アームレスリングとかやらないかね?」
「ボディビルでも有利だぞう。デカイ腕は審査員の目を引くぞう」
「パワーには向かないねぇ。体幹が少し細いねぇ」
「腕は割と長いからデッドは有利かもねぇ」
「もがもが……(何を言っているんだコイツ等は……?)」