突然の独り言は懐のキャラクターからはほど遠い内容である。それに重力と電磁波の総量はたぶんもの凄い量なので、統一理論に影響はないはずである。多分。
とにかく、ととろがガチで心配そうな表情をしていたのはお分かり頂けるだろう。
「大丈夫なの……。色んな意味で」
「色んな意味でやばい」
「あたし先帰るよ?」
「さようなら……。さようならととろ……」
「んな今生の別れじゃあるまいし……」
いつもここでお別れしている。一緒に帰る事は滅多に無い。というよりいつも懐は消え失せてしまう。
なので今日もいつも通りに外へ飛び出し、さっさと帰ってオペラグラスのチューンでもしようかと考えていた矢先。
「きゃっ!」
誰かとぶつかり転んでしまった。まるで壁にでも衝突したかのような衝撃は小さなととろを難無く吹き飛ばす。
「いたた」と言いながら、ぶつかった相手を見上げる。
そこに居たのは、有名人犇めく仁科でも、トップクラスの有名人達――!
「やっぱりこの娘と居たか。一人だとどこ行っても見つからないし」
「こっち尾行して正解だったな」
「あ……あんた等は……!」
その頃の懐は、外から迫る危機に気付く訳も無く、いまだ下駄箱相手にグチグチ喋っていた。そして、ついに最初の罠が襲いかかる。
「あの〜?」
「ふぇ?」
背後から声。振り返ると、見事な長身に見事なプロポーションの女性。日本人っぽくは無い。
「あー。あんた知ってるー」
「えー。知ってるの?」
「うんうん。ロニコちゃんっしょ。目立つもん。で、何?」
その女性の目線は懐と同じレベルにある。女性としてはかなりの長身。さらには超高校級のマッシブエロボディは目立つなというほうが無理な話だ。
女の子に話し掛けられてテンション上がるのは男の性である。多少なりとも元気になって速攻でバカ話に持ち込んで行く。
じゃあ、さっきまで一緒のととろじゃテンション上がらんのかというと、それは単なる馴れという物である。美人は三日で何とやらと言うだろう。