三橋「三橋穴党の党首の三橋廉です…」

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久し振りにおかあさんとおとうさんと一緒に夕飯を食べようとしていた。
おとうさんは今日は休みで肉料理と煮物を作ってくれた。
オレはテスト休みで練習が無かったし、
おかあさんも今日は学会が早く終わったからと日の落ちる前に家に帰ってきていた。
昨日、おとうさんの勤め先・・・学園の先生の1人の実家が牛蒡を作っているとかで学園の職員にまで新鮮な牛蒡が配られた。
そんな訳で目の前には鶏肉の牛蒡巻きが湯気を立てて皿に盛られている。
オレの唾が口の中で溢れんばかりになっている。気を抜くと口から垂れる。
早く食べたいのにこんな時に限っておとうさんがトイレから出てこない。
「お、おかあさん、先に食べていよう よ」
「んもう、滅多に揃わないんだから、ちょっと待ちなさいよ」
オレは思わずうぐうと唸ってしまった。おとうさんの手料理久し振りだ。美味しいんだ。早く食べたいのに!
おかあさんは立ち上がって鼻歌を歌いながら、鶏肉だから赤よねとか言ってワインの栓をひねっている。
ああ、もう、料理が冷めちゃう よ!  牛蒡巻き!茄子と鱈のトマト煮チーズ掛け!クラムチャウダー!
特に牛蒡巻きは作ったおとうさんも大プッシュしていた。
「牛蒡が新鮮だったからな!鶏も新鮮なのにしたんだぞ!!」ってね。
それなのにおとうさんは戻ってこない。うんちだとしても長すぎる!
玄関をコツコツと叩く音がした。お母さんはワインをグラスに注ぐ手を止めて立ち上がった。
「何かしら?」お母さんは玄関に向かった。オレは料理を目の前につまみ食いをするか否かで頭が一杯だった。
つまむとバレるよな・・・おかあさんもおとうさんも食べ物には厳しいし。オレはそっと手を伸ばした・・・玄関から大きな音がした。
沢山の紙の束が高いところから落ちるような音。オレは玄関に走った。目を疑った。
そこにはお母さんの姿は無かった。沢山の鶏が玄関の床を埋め尽くしていた。鶏は皆、オレの方を向いている。
オレは悲鳴を上げた・・・と思う。何だかよく分からない。オレはトイレのドアを叩いた。返事は無い。
鶏は叩きから上がりじりじりと迫ってくる。待っている時間は無い。トイレのドアを開けた。
鍵が掛かっているとばかり思っていたのに拍子抜けした。そこには・・・。
おとうさんはいなかった。トイレのところにも溢れんばかりの鶏。
鶏、家中鶏がいっせいにオレを睨み付ける。オレは床にへたり込んだ。
1羽の鶏がオレの右手に蹴爪を掛けた、そして・・・