クラシック弾いてきた人がハノン39番を応用してジャズスケールを憶える要諦
■ハノン39番で学べるスケール
1段目自然音階 (x dur)
I Ionian, II Dorian, III Phrygian, IV Lydian,
V Mixo-lydian, VI Aeorian, VII Locrian 計7
2段目和声的短音階 (1. x mol)
I Harmonic minor, V H.P.5 計2
3段目旋律的短音階 (2. x mol)
I Melodic minor, IV Lydian 7th, VII Altered 計3
■上記12スケール以外に個別練習が必要な頻出スケール
Diminish, Con-dimi. 計2
Holetone 計1
共に規則的な音の並びになっているので鍵盤上で憶える指使いは
Dim.が3パターン、Holetoneが2パターンで12音階全て網羅できる。
以上15スケールでスタンダード演奏はカバーできる。他にAugment, Chromatic, Spanishなど
数限りないが、この辺りになると各演者の個性の範疇に入る。またギターをやる人には
おなじみのPentatonicでも当然ソロは可能だが、ギターほど指先での音変化を付けられない
ピアノではむしろあの音の少なさで人に聞かせられる演奏をこなすのは困難とされる。
当然自宅で一人で楽しむ分には問題ないしツナギにはなるので使い方を考えるように。
■スケール理論を理解するための予備知識
ザックリ言ってしまえばコードトーンを含むスケールを選ぶのが基本。
クラシックでも例えばAmの曲でドミナントコードは白鍵だけ拾えばEm7のはずなのに
実際はGを半音上げてE7にする事が多く、それに合わせてスケールもハノン39番で言えば
1ページ目の2段目3段目が使われる事が多い。そして2段目を5度であるEから弾けば
上記一覧の通りEのH.P.5スケールで弾いた事になる。結局はそういう事の応用。
理論書の記述が難解に感じても「何でこのコードにこのスケール?」と
思ったときはそこに立ち返ると大抵そのコードトーンを指定してるだけだったりする。
コードトーンとスケールトーンが一致しない場合も例えば1度と3度だけは合わせて
メジャーマイナーの調性は保つとか、そのコードのキモになるテンションだけは
押さえるとか、裏コードのコードトーンを拾ってるとか、コードトーンを含む音を
拾ってスケールを選ぶ応用がほとんど。(現代音楽に掛かる無調系は除く)
付けられてるコード自体が意味不明に見える場合も転回、テンション、裏コードの
3つのどれかと見ると大抵はトニック、サブドミナント、ドミナント、パッシングのどれかに
分類できるコードが付けられている。それでも合わない場合はメロディー→
スケール→スケールトーンから音を拾ったコード、という逆順でみれば大抵合う。
こういった手法は主にビバップとモードで大きな進歩をした。スイングジャズの時代は
シンプルに付けられていたコードだが、ビバップの時代に入ると複雑なコードで
細かくリハーモナイズされるようになり、そのコードトーンを繋いでソロを作るスタイルが
広まった。その時点ではコードトーン以外の音は音階上の経過音という扱いだったが
モードの時代に入るとコードトーン以外の音もスケールとして規定し、コードよりもむしろ
スケールをチェンジしていくという考え方に変わって行った。今はその折衷的な感じで
演奏者がコードに合う数種のスケールから自由に選び取るという形が一般的。
■到達目標地点とそこに至る練習法
ジャズが弾けるというのは、リードシートで他の人とアドリブセッション出来るという状態を指す。
クラシックから移行する際の障害は主に即興性とリズムなのでそこを重点的に意識する事。
即興性に関して譜読みの経験を活かすなら、先ず予めジャズアレンジされた二段譜を弾いて
それに書かれてるフレーズをスケールで分解して崩し、崩したフレーズを指に馴染ませてから
リードシートに戻り、リードシートに書かれたキーとコードを見るだけで自然とそのスケールで
構成されたアドリブフレーズが手から流れ出てくるように慣らして行くと経験を活かせる。
リズムに関しては根本的に感じ方が違う。クラシック独奏では軽やかに緩急を付けながらその
流れの中でパッセージの粒を揃えていけるピアニストをリズム感が良いという事が多い。
対してジャズではドッシリと重い蒸気機関車の定速走行に乗せてもらってるような安心感を
リズム感の良さと言う事が多い。クラシックの感覚を引きずると緩急の付け方が妙に軽くて
安定感が無く、周囲の音を聞いて無い独善的な演奏と取られるので注意すること。