【東日本】〓SoftBank 新スパボ一括購入専用スレ 5

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25非通知さん
 合宿の頃から、ずうッと一人ぼっちだったぼくは、多勢の他テイムのなかに雑(まざ)ると、余計さびしく、出帆してから二三日、
練習以外の時間は、ただ甲板を散歩したり、船室で、啄木を読んだり、船室が、相部屋の松山さん、
沢村さんに占領(せんりょう)されているときは、喫煙室(きつえんしつ)で、母へ手紙を書いたりしていました。
 故国を離れてから三日目、ぼくは恥(はず)かしい白状をしなければなりません。
無暗(むやみ)に淋しくなったぼくはスモオキング・ルウムの片隅(かたすみ)で、とても非常識な手紙を書こうとしていたのです。
無論、書きかけただけで、実行はしませんでしたが、その前年の夏、鎌倉の海で、一寸(ちょっと)遊んだ、文化学院のお嬢さんに、
ラブレタアを書いてやろうと思ったのです。返事は多分、向うに着いて貰えるだろうと思いましたが、その、
円(つぶ)らな瞳(ひとみ)をした、お嬢さんには、すでに恋人(こいびと)があったかも知れないとおもうと、
気恥かしくなって来て、止(や)めにしました。

 やはり、あなたと初めてお逢(あ)いした晩のことは、はっきり憶(おぼ)えています。
 例の、食事中にはネクタイをきちんと結べ、フォオクをがちゃつかすな、スウプを飲むのに音を立てるな、
頭髪(とうはつ)に手を触(ふ)れるな、といった食卓作法(テエブルマナア)も、まだ出発して一週間にならない、
あの頃(ころ)はよく守られていました。