【東日本】〓SoftBank 新スパボ一括購入専用スレ 5

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14非通知さん
勝気な母も、やっぱり女です、兄が夜業でまだ帰りませんし、「困ったねエ」を連発していました。
 ぼくはまた、自動車で、渋谷から向島(むこうじま)まで行きました。
熱が出たようにあつい額を押え、憤(いきどお)りと悔(く)いにギリギリしながら、艇庫につき、念を入れてもう一回、
押入れなぞ改めてはみましたが夜も更(ふ)け、人気(ひとけ)のない二階はたださえ、がらんとして、いよいよ、もう駄目だ、
という想いを強めるだけです。
 ぼくは二階の廊下(ろうか)を歩き、屋上の露台(ろだい)のほうへ登って行きました。
眼の下には、鋭(するど)い舳(バウ)をした滑席艇(スライデングシェル)がぎっしり横木につまっています。
そのラッカア塗(ぬ)りの船腹が、仄暗(ほのぐら)い電燈に、丸味をおび、つやつやしく光っているのも、
妙(みょう)に心ぼそい感じで、ベランダに出ました。
遥か、浅草(あさくさ)の装飾燈(そうしょくとう)が赤く輝(かがや)いています。
時折、言問橋(ことといばし)を自動車のヘッドライトが明滅(めいめつ)して、行き過ぎます。
すでに一艘(そう)の船もいない隅田川(すみだがわ)がくろく、膨(ふく)らんで流れてゆく。
チャップチャップ、船台を洗う波の音がきこえる、ぼくは小説(ロマンス)めいた気持でしょう、死にたくなりました。
死んだ方が楽だと、感じたからです。