【東日本】〓SoftBank 新スパボ一括購入専用スレ 4

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835非通知さん
この山の中だ。時には荒くれた猪《いのしし》が人家の並ぶ街道にまで飛び出す。塩沢というところから出て来た猪は、
宿《しゅく》はずれの陣場から薬師堂《やくしどう》の前を通り、それから村の舞台の方をあばれ回って、馬場へ突進したことがある。
それ猪だと言って、皆々鉄砲などを持ち出して騒いだが、日暮れになってその行くえもわからなかった。
この勢いのいい獣に比べると、向山《むこうやま》から鹿の飛び出した時は、石屋の坂の方へ行き、七回りの藪《やぶ》へはいった。
おおぜいの村の人が集まって、とうとう一矢《ひとや》でその鹿を射とめた。
ところが隣村の湯舟沢《ゆぶねざわ》の方から抗議が出て、しまいには口論にまでなったことがある。
「鹿よりも、けんかの方がよっぽどおもしろかった。」
 と吉左衛門は金兵衛に言って見せて笑った。何かというと二人《ふたり》は村のことに引っぱり出されるが、そんなけんかは取り合わなかった。