【東日本】〓SoftBank 新スパボ一括購入専用スレ 4

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827非通知さん
この金兵衛の話が出るたびに、吉左衛門は日ごろから「本陣鼻」と言われるほど大きく肉厚《にくあつ》な鼻の先へしわをよせる。
そして、「また金兵衛さんの前代未聞が出た」と言わないばかりに、年齢《とし》の割合にはつやつやとした色の白い相手の顔をながめる。
しかし金兵衛の言うとおり、あの時の大通行は全く文字どおり前代未聞の事と言ってよかった。
同勢およそ千六百七十人ほどの人数がこの宿にあふれた。問屋の九太夫《くだゆう》、年寄役の儀助《ぎすけ》、同役の新七、
同じく与次衛門《よじえもん》、これらの宿役人仲間から組頭《くみがしら》のものはおろか、ほとんど村じゅう総がかりで事に当たった。
木曾谷中から寄せた七百三十人の人足だけでは、まだそれでも手が足りなくて、千人あまりもの伊那の助郷《すけごう》が出たのもあの時だ。
諸方から集めた馬の数は二百二十匹にも上った。吉左衛門の家は村でも一番大きい本陣のことだから言うまでもないが、
金兵衛の住居《すまい》にすら二人の御用人《ごようにん》のほかに上下合わせて八十人の人数を泊め、馬も二匹引き受けた。