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他社にとっては、オレンジ・ブループランはむしろ価格競争をこれ以上したくないというソフトバンクのメッセージに
受け取れないこともありません。ソフトバンクは体力では不利です。ところがこれも、一種の孫マジックと言っていいでしょうが、
オレンジ・ブループランには巧妙な仕掛けがしてあって、他社が価格を下げると自動追従するため、
ソフトバンクから客を奪う効果は期待できません。お互いの体力を削ぐ効果しかないのですが、
au,ドコモが既存プランを値下げすると既存ユーザに対しても値下げとなるため、膨大な利益が減ります。
ところがソフトバンクはオレンジ・ブループランを値下げするだけなので、短期的には新規ユーザの一部しか値下げされず
消耗する体力が少なくて済みます。つまり、au,ドコモは既存プランを値下げすると直ちに数千万ユーザの値下げになりますが、
ソフトバンクは当面、数十万、あるいは百万を超える程度のユーザの値下げで済みます。
これではドコモにいくら体力に余裕があっても、生半可な決意では価格競争を仕掛けることはできないでしょう。
もちろん、既存ユーザは値下げせず、新規ユーザだけ優遇するプランを作ればこの問題は回避できますが、
それでは既存ユーザを軽視することになり、CMで”信頼”とかやってしまったドコモにはかなりやりづらいでしょう。
そして、もちろん目玉のゴールドプランでの音声定額も真似をしづらい。これは、これまで何回か指摘してきましたが、
ソフトバンクはドコモを上回る基地局数と世界で一番クラスのバックボーンを整備する一方でユーザ数は少なめなため
ネットワークに余裕があるためです。特に3Gネットワークには余裕があり、Vodafoneの時代にはその余裕を生かして、
新規参入予定のソフトバンクやイーアクセスにMVMO(回線貸し)を計画していたほどです。
基地局の数や能力やソフトバンクのように強力なバックボーンを整備することなしに、auやドコモが音声定額を
始めてしまえばネットワークが破綻することは目に見えています。音声定額は、他社が真似のしづらい
トラフィック多消費型サービスの典型と言えます。