719 :
非通知さん:
古い記事だが今見てると面白かったので貼ってみる↓
日産のツーカー株売却、本命シナリオ別にあった――「日本テレコムに9社一括売却」。
1999/08/06 日経産業新聞
経営再建中の日産自動車が傘下のツーカー九社の保有株をDDIと日本テレコムに売却し、
携帯電話事業から全面撤退することを決めた。新電電の全国一貫サービス提供を妨げていた
「資本のねじれ」は解消する。市場から退出する日産の権益を事業パートナーがそれぞれ
引き受けるのは、自然な流れのようにみえる。その陰では、最後まで本命視されながら、
ついに実現しなかった「幻の再編シナリオ」があった。
「日本の移動通信業界にとって最善の選択」――。ツーカー株売却を発表した二日の記者会見で、
日産の天明昭雄・上席常務は“本音”をぐっとのみ込んだ。
日産はツーカーセルラー東京、同東海、ツーカーホン関西の東名阪三社と、その他地域のデジタル
ツーカー六社に、各二〇―三〇%台を出資。ツーカーセルラー二社はDDI、デジタルツーカー六社は
日本テレコムが日産と並ぶ筆頭株主である。日産の撤退を受け、DDIが東名阪三社、日本テレコムは
その他地域六社の株式を買い取る。
720 :
非通知さん:2005/07/26(火) 17:43:43 ID:vURH4WhF0
この売却交渉が日産が当初期限とする三月中にまとまっていれば、天明氏の言葉は額面通り受け
取ってよかった。だが、実際の決着はその四カ月後にずれ込んだ。実はその間、日産が「最善の選択」
と信じ、実現に向けて奔走したのは、九社を日本テレコムへ一括売却する案だった。
「我々もツーカーセルラー株を手放したい」。当初は日産からの株式取得に意欲的だったDDIが、
方針を百八十度転換したのは、期限切れ目前の三月後半である。株主間協定では、日産保有株の
優先買い取り権は、同じ筆頭株主のDDIにある。そのDDIが「買い手」から「売り手」へと突如転身した
ことは、事態がいったん白紙に戻ることを意味した。
ただ、「ツーカー株をただ手放すのではなく、その手放し方が問題」(幹部)としていた日産にとって、
DDIの変節は「渡りに船」の側面もあった。
実は日産は以前、DDIからツーカーセルラー株を買い増し、日本テレコム系のデジタルホンと
合併させる案を検討したことがある。この構想は具体化しなかったが、設備の親和性やサービス面での
協力関係を考慮すれば、デジタルホン三社とデジタルツーカー六社、ツーカー三社という「一・五ギガ
ヘルツグループの大同団結」は無理がない。
721 :
長文スマソ:2005/07/26(火) 17:48:41 ID:vURH4WhF0
DDIの心変わりは不思議ではない。同社は東名以外でセルラー電話八社を展開するが、トヨタ自動車系
の日本移動通信(IDO)とは営業地域が相互補完関係にあり、四月から新サービス「cdmaOne」の全国
展開を協力して開始した。合併など経営統合も検討している。稲盛和夫DDI名誉会長は「ツーカーセルラー
に出資している重要性は薄れた」と漏らし始めていた。
一方、日本テレコムにとっては「東名阪三社の話は、デジタルツーカー六社ディールのおまけ」(同社役員)。
ただ、加入台数の基盤を労せずに獲得できれば利点は大きい。
「総論」でDDIと日本テレコムの思惑は一致。株式の売買価格という「各論」の合意に向け、日産は両社間の
調整に飛び回った。
七月半ばに、事態は再び一変する。DDIが売却価格への不満を理由に、「ツーカーセルラー株を手放す
考えはなくなった」と主張し始めた。日産関係者は翻意を迫ったが後の祭り。日産はもともと、資本の一部は
残す腹づもりだったが、ツーカーが三社と六社に分割して売却されればその意味もなく、携帯電話事業から
全面撤退を余儀なくされた。
「手塩にかけて育てたツーカーセルラー二社をみすみす手放す考えはまったくなかった」。二日の会見で
こう語った奥山雄材DDI会長兼社長も、幻の再編シナリオには一切触れずじまいだった。
迷走した売却交渉は、どちらに転んでも資本のねじれ解消につながったのは確か。だれもが納得するはず
だった「解」を、最後の最後で覆した決断が吉と出るか、凶と出るか。DDIは今後、大きな宿題を背負ったことになる。