FOMAユーザーは過半数が電波状態に不満 Part17
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週刊朝日8/5特大号・P151〜P153:
FOMA「つながらない」理由 第3世代携帯電話の弱点
「3本立ってるのに切れちゃう」
王者・NTTドコモの第3世代携帯電話「FOMA」のユーザーから「つながらない」
「切れやすい」との不満の声が上がっている。なぜなのか。
「去年、携帯をFOMAに変えたんだけど、アンテナは3本立ってるのに、よく通話途中で
切れちゃうんだよね。メールが送れないことも多いし…。いったい、どうなってんだよ!」
本誌編集部の某デスクは怒り心頭である。その夜、やはり1年前にFOMAに変えた知人
にも聞いてみた。この知人は、長野県松本市の浅間温泉に住んでいる。
「1年たっても接続状況は、まるで良くなりません。ウチは木造2階建てなんですが、
家の中で通話をしていると、ほぼ毎回、電波が切れる前に鳴る警告音がピロピロ鳴りだして
、あわてて窓際に走っていくんです」
FOMAといえば、01年に始まったNTTドコモの第3世代携帯電話。
第2世代のmovaに比べ、データ通信が圧倒的に高速で、テレビ電話も可能になったが、当初は、
携帯端末の電池がすぐ切れる、通話エリアが狭い、端末価格が高いなどの理由で、売れ行きは
さっぱりだった。
ところが、ドコモは昨年からファミリー割引を拡大したり、FOMA向け定額制パケット通信サービス
「パケ・ホーダイ」などを導入し、猛烈な値下げ作戦を展開。そのあおりで05年3月期のドコモ
の決算は会社設立以来初の減収減益となる一方で、movaのユーザーは堰を切ったようにFOMAへ
移行し、新規契約から解約数を引いたFOMAの純増数は、昨年4月以来、KDDI(au)の第3世代携帯電話
の純増数を上回ることになった。
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週刊朝日8/5特大号・P151〜P153:2005/07/28(木) 20:07:59 ID:8ZFCIzOY0
だが、FOMAの「弱点」に不満を感じる人も多いようだ。昨年6月のMM総研の調査では、FOMAユーザー
の53%が電波の接続状態に不満を持っていた。本誌が今回行ったアンケート調査でも、movaやauに
比べFOMAユーザーの不満が高いとの結果が出た(153ページグラフ)。
では、FOMAはなぜ、「つながらない」という印象を与えるのだろうか。
通信ジャーナリストの神尾寿氏に聞いた。
「FOMAの電波の周波数は、movaで使われている800メガヘルツではなく、2ギガヘルツです。
高周波数の電波は直進性が高く、障害物に遮られやすいなどの特製があります。ですから、
FOMAの基地局は高密度に設置しなければならないんですが、基地局の置き方によっては
電波の干渉が起きてしまいます」
FOMAのネットワーク設備はmovaと互換性がないため、新たに張り直さなければならない。
ドコモ無線アクセスネットワーク部の朝倉弘光氏が言う。
「地方や山間部では広範囲に電波が飛んでいくよう、都市部では障害物で影ができないよう
四方八方に、それぞれ基地局を置いています。エリアを広げながら密度も高めていくという
二本立てで、エリア構築をどんどん進めています」
05年3月末には、FOMAの基地局数は約2万局と、movaと並んだ。06年3月末には約3万局
まで増やす計画だ。
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週刊朝日8/5特大号・P151〜P153:2005/07/28(木) 20:08:35 ID:8ZFCIzOY0
ただ、神尾氏も指摘するように、基地局は数を増やせばいいというものでもない。
au技術本部ワイヤレスブロードバンド開発部長の渡辺文夫氏が言う。
「トラフィック(通信回線の混雑度)は場所や時間帯で常に変わってきますから、そこをにらみ
ながら基地局のちょうどいい数や位置を割り出すんです。さらに電波が飛びすぎて干渉を
起こしているようなところでは、アンテナの向きを微妙に変えるなどの工夫をする。我々は
そういう地道な作業を10年かけてコツコツやってきたんですね。」
auの第3世代携帯電話は、第2世代と同じ設備を使えることから、過去に積み上げたノウハウ
をそのまま享受しながら、エリア構築を行ってきた。
一方、FOMAでは、こうした作業を一からやり直す必要がある。その調整は、「まさに進行中」
だと、朝倉氏は認める。
「我々はFOMAの電波の特性をふまえて基地局を設置していますが、地域や建物によっては
まだうまく接続しないところもあるかもしれません。そうしたピンポイント情報はむしろどんどん
いただきたいんです」朝倉氏はさらに、
「電波の品質からすれば、いまは昔とはまったく別物です。FOMAの『いま』を見てほしいですね」
と強調した。
だが、FOMAが「つながらない」原因は、ほかにもありそうだ。
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週刊朝日8/5特大号・P151〜P153:2005/07/28(木) 20:09:07 ID:8ZFCIzOY0
圏外になる確率「auより高い」
KDDIの渡辺氏が言う。
「我々は、とにかく電話がつながらなければ、1円ももうけることができないと考えています。発信
してから相手に接続するまでの時間はドコモさんよりかかる傾向はありますが、極力つながるように
設計しているんです」
これに対して、ドコモの朝倉氏は、
「たしかに我々はauに比べて圏外になる確率は高いかもしれません。でも、途切れがちな電波で
つなげてもユーザーのメリットにはならないと考えています」
この違いは、どういうことなのか。
携帯電話は、待ち受け時にも自分の位置情報をネットワークに発信している。携帯に電話をかける
場合、その位置情報を頼りに呼び出す仕組みになっている。発信ボタンを押してから、「トゥルルルル」
と呼び出し音が鳴りだすまでの間に、こうした作業がせっせと行われているわけだ。
だが、相手が基地局のエリアをまたがって移動していると、位置の特定や接続までに時間がかかる。
早めにあきらめて「おかけになった電話は電波の届かないところにあるか…」というメッセージを流すか、
時間をかけてでも相手を探し出そうとするか。
ドコモは比較的早めに「圏外」と判断する設計になっているという。
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週刊朝日8/5特大号・P151〜P153:2005/07/28(木) 20:16:53 ID:jLwGuejO0
さらに、電池の持続時間も、「つながらない」理由と関係しているようだ。
携帯電話はゲームなど、いろいろな機能を利用すればするほど、当然、電力の消費は多くなる。
通信方式を含め、なにかと電力がかかる第3世代では、特に節電の工夫が必要だ。携帯電話は、
飛んでくるさまざまな電波の中から、自分あての電波を探し出したり、電波の強さをチェックしたりと、
意外に忙しく働いているのだが、この作業の間隔を長めにとることで、消費電力を抑えている。
ところが、ユーザーが姿勢を変えるなどで電波の強さが変わった場合、端末のチェック作業が休止中
だと、実際は圏外なのに、画面のアンテナは3本立っているということもある。つまり、姿勢を変える前の
電波状態を示したままなのである。
「これは、心理的に端末のアンテナ表示に裏切られたとの思いをいだかせます」(神尾氏)
ドコモ広報部は、「メーカーと協議と実験を重ね、そういったことが起こらないよう、設計のガイドラインを
作っています。ただ、個別のケースでその差を感じることはあるかもしれません。我々としては、その差
をなくすよう、努力しているところです」と説明した。
548 :
週刊朝日8/5特大号・P151〜P153:2005/07/28(木) 20:17:43 ID:jLwGuejO0
FOMAがこだわるテレビ電話機能も問題だという。再び神尾氏が指摘する。
「FOMAはテレビ電話にこだわるあまり、いろんなものを犠牲にしています。アンテナもその一つ。
テレビ電話を端末に入れることでアンテナのスペースが小さくなり、感度の向上も犠牲になっているのです」
ドコモ広報部は、「そこは微妙な問題。これからもメーカーと協議して、そういうことがないような基準値で
設計のガイドラインをつくっていますから」と説明するが、メーカー側からは、
「テレビ電話がなければ、そりゃ、できることはいろいろありますよ。現場でいろんなやりとりがあったこと
も事実」(幹部)
と “微妙な$コも上がる。
一方、昨年秋から年末にかけ、FOMAを狙い撃ちした「ワン切りテレビ電話」が横行し、つながりにくくなる
という、ドコモにとっては迷惑な話もあった。
「あれで『ドコモはつながらない』という風評が広まってしまった面もある」(広報部)
来年後半から、電話番号を変えずに電話会社を変えることができる「番号ポータビリティ」が始まる。
今後主力となるFOMAが「つながらない」ままでは、「固定電話会社がマイライン導入で味わった本当の
競争」(NTTグループ社員)は乗り切れない。
「その日」までにドコモがどんな手を打つか、1371万人のユーザーが注目している。