AH-K3001V 京セラH"/AirH"PHONE端末総合スレvol.118

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57前作者氏とは無関係ですが・・・
永遠のAA 1.
「ほれ見てみい。ちゃんと出たで。京ポン。」
(・・・ちょっと、遅かったけどな・・・)
発売されたばかりの京セラ製エアエッジフォンを持って、僕は弟の墓前に立った。

「へへへ。『また無駄使いして!』って、お前なら怒るやろな。兄ちゃん3つも買うてもうた。
 でもなあ、モックではアカンのや。兄ちゃんあんときなあ、お前をだましたんや。全然違う
モック持ってきてなあ、目の見えへんお前に差し出して・・・」
花を生け、線香に火をつける。気がつけばこんな動作にずいぶん慣れてしまっていた。

「ホンマ堪忍やで。せやからな、今日はこうして・・・ほら、雨除けのヒサシ作ってきたんや。
兄ちゃんの日曜大工やで。うまいもんやろ?和尚さんもな、事情を話したら、悪い顔せんと
OKしてくれたわ。よかったなあ。これでこの京ポンはずっとお前のもんやで。本物の京ポン
やで。またメールちょうだいな。」

「お前は白がええかな?兄ちゃんはシルバー使おうと思うねん。やっぱスゴイなあ京ポンは。
パソコン用サイトも見れるし、カメラも付いてる。ホンマ何でも出来るで。」
墓石を洗った水を丹念に拭いて、僕は自作のひさしと端末を置いた。


「さて、きょうはこれで帰るわ。兄ちゃんこの足でちょっと寄るとこあるしな。またすぐ来るからな。
じゃあな。」
自分の端末をポケットに納めると、僕は弟の墓を後にした。家電ショップの袋ではさすがに色気が
なかろうと、文具店で買った紙袋には、もう一台のエアエッジフォンが入っている。
既に花は散り、緑の葉が生い茂った桜並木の下には、初夏の日差しが木漏れ日となって降りそそぐ。
実を言うと、桜は花の頃よりも若葉の頃の方が好きなのだ。照り映える緑の葉は、ほとばしる生命力
を感じさせる。
この若葉のように、あの子もきっと元気になる。そう、あの子はきっと・・・
58前作者氏とは無関係ですが・・・:04/05/15 07:29 ID:Huiip90W
永遠のAA 2.
額を少々汗ばませて、たどり着いた先は病院である。そう。かつて弟が入院していた病院だ。
今日は受付である手続きを済ませ、いつもの病室を目指す。すれ違う看護師たちと挨拶を軽く
交わす。決して小さな病院ではないのだが、今ではほとんどのスタッフと顔見知りである。
廊下を曲がり、個室の並びに入ると、僕は一つの扉の前で立ち止まった。

ここは、かつて弟が入院していた病室。

把手に手を掛け、扉を開ける。日当たりのよいこの部屋は光が溢れている。そして光の向こう、
少年がベッドに半身を起こし、本を読んでいる。


「あっ、お兄ちゃんや!」

少年はいつもの人なつっこい笑顔を僕に向け、無邪気な声を出す。

「よお。こんにちは。具合、どうや?」
「うん。元気やで。でもな、毎日検査あんねん。」
「あはは。そらしゃあないな。病院やからな。」
「でも、毎日注射で血ぃ取られんねんで。ボクもう注射イヤや。」
「ガマンガマン。あははは。」・・・・・
59前作者氏とは無関係ですが・・・:04/05/15 07:29 ID:Huiip90W
永遠のAA 3.
・・・・・
弟が息を引き取った翌日。片付けも手につかず呆然としていた僕と母に、きまり悪そうに婦長が
寄ってきた。申し訳ないが午後から入院予定の患者がいるので、早めに空けてほしいとのことだった。
仕方のないことだろう。ここは病院なのだ。治療を必要としている患者はいくらでもいる。
涙ぐむ母をなだめ、荷物を片付けていたところ、なにやら扉からこちらを覗く小さな影がある。近づいて
いくと人なつっこい笑顔を向けて、少年が飛び込んできた。

「なあ、お兄ちゃん退院するん?」
「あ、ああ。そ、そうやで・・・」
とっさに出た曖昧な返事でその場を乗り切る。
「あぁ、そうか。自分が今日からここ入るんか?」
「うん。そうやねん。ええなぁお兄ちゃんは。僕なんかずっと入院ばっかりや。学校もずっと行ってへん・・・」
「そうか。早う良うなるといいなぁ。」
「うん!」


これが僕と少年との出会いだった。難しい病気ではあるらしい。ただ、幸いにも比較的発見が早かったので、
手術さえ成功すれば、十分完治が見込めるということだった。
生まれ変わりなんてはずもない。容姿だって似ているわけでもないが、しかし僕はこの少年に弟の姿を重ねて
いた。この子は、この子だけは助かってほしい。そう切に願った。
以来、数日おきに僕はこの病室を訪れている。
60前作者氏とは無関係ですが・・・:04/05/15 07:30 ID:Huiip90W
永遠のAA 4.
「ところで今日はな、プレゼントがあんねん。」
「えっ!? なになに?」
先ほどから提げてきた紙袋を手渡す。中を見た少年は、
「ああ〜!これ携帯や!お兄ちゃん、病院で携帯は使ったらあかんねんで!」
「いや、これはええんや。これはな、PHSいうて、使ってる電波が弱いんや。せやからお医者さんも病院の中ではこれ
使ってるんやで。」
「ええ〜?ほんまに〜?」
「ほんまやほんま。ほら、さっき婦長さんに言うてな、病院の中で使ってもいいですよ〜っていうしるしのストラップも
もらってきた。これ付けとけば周りの人も安心しはるしな。」
「じゃあボクもこれで電話したり、メールしたり出来んの?」
「それだけやないで。これは京ポンっていうてな、何でも出来るんや。インターネットも見れるし、掲示板も見るだけや
のうて、書き込みも出来るんや。せやから入院しててもな、いっぱい友達出来るで。」
「ええっ!ほんまに!すごい!やったやったぁ〜!!」

説明書を一緒に見ながら操作法を教えていく。元々覚えがいいのか、少年はすぐに掲示板への書き込みくらいは
出来るようになった。
「あ、もう返事が来てる!『お友達になりましょう』やって!!」
「よかったなぁ。インターネットの友達第一号やな!」
「うん!!」
61前作者氏とは無関係ですが・・・:04/05/15 07:31 ID:Huiip90W
永遠のAA 5.
・・・勝手な思い込みであるのは承知しているが、これで僕は弟への罪滅ぼしが出来たと思っている。あれから少年は
毎日メールをくれる。優しい看護婦さんのこと、コワい先生のこと、今日読んだ本のこと・・・
つたない少年の文章は曇りのない希望で満ちている。
そしてある日の見舞いの折り、少年は僕に尋ねた。

「なぁお兄ちゃん。最初から入ってたんやけど、この壁紙はなに?」
「ああ、それか。兄ちゃんの知ってる人が作ったんや。AAっていうんやで。よく出来てるから画像にして入れといたんや。
かわいいやろ?」
「うん!その人も京ポンが好きやったん?」
「ああ。今はちょっと遠くにいるけどな、そいつも毎日京ポン使ってるで。」
「ふぅん。じゃあ毎日楽しいんやろうね。」
「ああ。そうやな。」

夏を前に、桜並木のこもれ日はますます生命力をみなぎらせていく。少年の手術の日取りが決まったらしい。
「この子はきっと元気になる。」
どこまでも澄みきった空が、希望に溢れる未来を確信させた。


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