中島なども気にはなってはいたようだ。
だが、その雰囲気に圧倒され、声を掛ける者は誰もいなかった。
それが何かも分からずに、男共は彼女を敬遠しがちになっていた。
その雰囲気が…色香だと気付いていたのは俺だけだった。
俺は少しずつ、彼女に接近し始めた。
めぐみが転校してきて五日目の昼休み。
クラスメート達が遊ぶ校庭の片隅で、ひっそりと佇む彼女を見つけた。
男共からだけでなく、女共からも孤立していた。
男共が、そうとは気づかぬまま彼女の色香に尻込みしているのとは反対に
女共は・・・明らかに彼女を意識的に避けていた。
成長期において、男子よりも女子の方のが性的に早熟だという。
めぐみが、初々しい肢体の底から時折漂わせる熟れた女の匂い・・・
いや臭いを、同性達は敏感に嗅ぎ取っている。
そこにあるのは嫉妬・・・。そうなのだろう。
だが、俺から見ればお笑いだ。
めぐみに比べれば、娘とさえ言えない小便臭い女達が、彼女に嫉妬する姿は。
ことにカオリなど、あからさまにめぐみを嫌っている。つまらない女だ。
まだそう遠くない昔、この女に抱いていた想い。そんなものは嘘だと知った。
親父に『実の子ではない』と宣言を受けた俺に僅かに残された静謐を
それを凌駕しかねない狂気から守るための逃避でしかなかった、と。
俺は、校舎の壁に寄り掛かる彼女に、声をかけた。
「めぎゅーー♪」
めぐみに抱きついた俺は背後に視線を感じた。
そこには義妹のワカメが立っていた。
俺は本能的にそのときたまたま持っていたトカレフをワカメめがけて発砲した。
「兄者ーーーーーーーーーーーーーーー」
ワカメは一瞬で絶命した・・・