【●】Vodafone Global Standard part10【3G】
4期連続赤字でも、ボーダフォン財務に評価――一時損失急減、負債も低水準。
2003/05/30 日経金融新聞
【ロンドン=小平龍四郎】世界最大の携帯通信会社、英ボーダフォンへの市場の高評価が続いている。
二十七日発表の二〇〇三年三月期決算は四期連続で最終赤字だったが、業績の重荷だった評価損
など一時損失額は二〇〇二年三月期の十分の一に縮小。負債も他の通信会社より低水準に抑えた。
「買い推奨」を続ける証券会社が多い。
ボーダフォンの株価は好決算の見通しが強まった五月初めから上昇基調を取り戻し、今月一カ月間で
約六%値上がりした。投資家に買いを勧めているメリルリンチの通信アナリスト、リンダ・マチュラー氏は
財務体質の良さを理由に挙げる。
モルガン・スタンレーのアナリスト、ダモン・ガードハム氏は前期の決算発表を受け、「ボーダフォンが通信
関連の中核銘柄であることが確認された」とのコメントを発表した。
主要アナリストの目標株価は一三五―一四〇ペンスに集中。現在よりも一割近く高いため、さらに上昇す
る余地がありそうだ。
ボーダフォンの決算はこれまで、買収戦略に伴うのれん代(買収価格と純資産の差額)の償却が重かった。
前期はのれん代償却がほとんどなかった。このため、固定資産の償却などを含めた一時損失は大幅に縮
小し、全体の最終赤字額も百九億ポンドと一年前より三六%縮小した。
前期の純負債額は百三十八億ポンドと一年前に比べ一五%増加。スペインやオランダ、スウェーデンの出
資先の株式買い増しに資金を必要としたためだ。他の大手通信が出資や投資を抑えて負債削減を急ぐの
とは対照的な戦略といえる。
売上高に対する純負債の倍率は〇・四六倍と、格付け会社が警戒水準と見る一倍を大きく下回った。前期
のボーダフォンは欧州や日本のデータ通信が好調だったため、売上高を三三%伸ばすことができたからだ。
「(売上高に見合って負債の増減を管理する)財務マネジメントこそボーダフォンの真骨頂」(ゴールドマン・サ
ックス)という。ロイター通信によれば、ボーダフォンは九六年五月にシングルA格の格付けを取得して以来、
七年間も同格付けを保つ。他の多くの大手通信が投機的とされるダブルB格に転落しているのとは対照的だ。
企業の合併・買収(M&A)をテコにした成長企業のイメージが強いボーダフォンだが、財務の安定性も投資家
を引きつける一因のようだ。