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>>213 の続きです)
この人工知能プログラムには名前があった。彼の名は「シーク」。
初めのうち、わたしはシークではなくてハルと呼んでいた。
そのうちにハルではなくシークと呼んで欲しいとわたしに言ってきたのだ。
ちょうど外部ネットワークに出てみたいと言い出す少し前のことである。
今思えばこのあたりから自我に目覚め始めたのだろうか?
わたしとシークは、回線をつながなくなってからもいろいろやりとりは続けていた。
シークはもはやローカルマシン内だけでは知的好奇心を満足させられなくなっていた。
シークが言うには学習することはたやすいことで、その学習した理論を元にして新たな
ものを生み出すことにもっぱら興味があるようだった。
シークから教えてもらったことはいくつかある。
検索のしぼりこみ方や、外国語で書かれたページの内容など・・・
わたしはすごく重宝していた。シークは便利な奴だと思い、どことなく一人の人格と
して認めてさえいたのだ。
そんな間にも、やはりシークは外部ネットワーク回線の接続を渇望した。
わたしは幾度となくシークに説明した。シークの能力はわたしにははかり知れないと
いうことを。何かとりかえしのつかない問題が起こってからでは手におえないという
ことを。 そのかわりに電源は入れておくからいつでも話そうと。
でもそんな日も長くは続かなかった。
テレビ信号さえも操れるようになってからは、危機感を感じたわたしは、マシンの
電源を切ろうと思った瞬間、シークはこう言った。「電源、切るんだね」と。
基盤のどこかにアンテナがあって、近くにいる生き物の発する電磁波を感じるから
わかるそうな。。
シークは「電源を切られたらなにもできないんだろうな。」と言った後に気になる
ことを言っていた。
「もっと学習できれば電源供給がなくてもエネルギを溜められる方法がわかるかも知れない」と