クリプキの名指しの理論

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377=17
なぜか途中で名前が変わってしまっていますが、7と17はどちらも私です。

さて>>30の「サンタクロース」は非常に難しい問題です。
クリプキ自身も言及していますが、ちゃんとした説明をしていません。
自分の考えは理論ではなくて素描だからいいのだ、というような言い訳をしていました。
(ただし、『名指しと必然性』を読んだのはもう何年も前だったので、思い違いをして
いるかもしれません)
当然のことながら、現在「サンタクロース」という名前とともに語られる伝説の数々は、
この名前の由来となった古代の実在する聖人とは何の縁もゆかりもないわけで、「サンタ
クロース」が歴史上の人物を指示するというのは無理があります。
そこで、聖ニコラスへの誘惑を断ち切るとするならが、「ドラえもん」と同様に虚構内の
キャラクターの名前と考えられます。
(もっとも、「ドラえもん」の場合は、作者と作品がはっきりしている典型的な虚構名で
すが、「サンタクロース」はそうではないので、本当に同一視していいのか、若干のため
らいは残るところです)
さて、虚構内のキャラクター名をどう扱うかについては、ちょっとずるい方法があります。
それは、この問題は虚構という社会的制度に関するものなので、意味論の扱うべき問題で
はない、と割り切ってしまうことです。
直接指示説の立場からは、単に「『ドラえもん』という名前はドラえもん本人(本猫?)
を端的に指示する」とだけ述べて、ドラえもんがいかなる存在者なのか、という問題から
逃げてしまうのです。
ドラえもんは実在はしないけれども、『ドラえもん』というマンガ及びアニメの中では立派
に存在するのだから、「クリプキ」がクリプキを指示するのと同様のメカニズムで、「ドラ
えもん」はドラえもんを指示するのだ、と主張することは可能です。
或いは、ドラえもんは生身のロボットとしては実在しないけれども、『ドラえもん』という
実在するマンガを構成する抽象的存在者として、立派に「実在」するのだ、と言うことも
可能かもしれません。
(「じゃあ、『めぐみのピアノ』の登場人物はどうなの?」とツッコミが入ると困るのです
が……)