主:吉本の麻原評価への断罪といい、社会道徳的批判としてそういうものが出てくるのはまあ
解るとして、世の論檀というのがすべからくそういった声に大政翼賛的に同調するというのがあ
からさまだった。ハイデガーの『哲学への寄与論稿』にしても、渡邊二郎が病床で重要性を訴え続け
たにもかかわらず、渡邊没後の研究では未だにあれがリアリティーを備えたものだというところ
は触れずに済ましている。とんでもない話で、高田珠樹が典型的だけど、いかにも触れたくない
のがみえみえなんだな。お粗末というか(笑)小心というか。〈根源の歴史が有るものとの交換の拒絶
を開け、贈与する〉〈底無しの深淵を開ける〉とか、サリン事件に繋がる〈使い途のない否定性〉を
ストレートに言い表している概念とも言える。また、ナチズムがハイデガーからみればまだ現代的
な効率主義であり工作機構であったことも伺える。色んなことが読める本だが、ハイデガー研究も
公共性に呑み込まれたことの象徴に見えるんだけどね。無難なことしか言えなくなってる。