客:ハイデガーの文章の迫真性からすれば.‘御託せん’とか‘簾を剥がせ’とかの声ってのがむし
ろ現代人の無理解にしか見えないんだな。古くは盟友ヤスパースの例があるけど、あれほど近い
人間でさえが最後まで理解出来なかったというね。ハイデガーの思想の重心が最後まで掴めなかっ
た。盟友でさえがそうだったという悲劇がある。ナチ体験について沈黙した、よく言われてるけど
、『哲学への寄与論稿』からはそれは見えるわけで。ただし『寄与』ってのはメッセージがあるとした
ら、〈底無しの深淵に、有の拒絶に、脱‐理性的動物に開かれよ。人間の尊厳はそこにある〉なんだか
ら、よって人権主義的反省など、いずれにせよハイデガーから出てくる余地はないわけだ。そこで
ナチス運動を惑星的運命と捉える視点も可能になったろうからね。
主:その辺で理性的動物としての哲学とハイデガーとの相容れなさが明確になるんだろうな。い
わゆるグローバル・リベラリズム、進歩主義、等々と相容れなさが浮き上がる。もっと言えば人間
を客体化し、主体化する理性主義ね。その辺で分岐していくでしょう。
客:そういう意味でも『寄与』は重要だと思うね。