歴史を知らずに哲学は語れない 10

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175第三の波平 ◆JXLBbnYqTY
■日本人の言語思想の系譜 太平記読み


太平記読みの思想

「太平記読み」の時代:近世政治思想史の構図若尾政希(ISBN:4582767753)が、平凡社ラ
イブラリーの文庫本として出版された。これで始めて「太平記読み」のことを知った。太
平記読みは太平記を解読した本で、江戸初期の出版の普及とともに武家層から庶民にまで
広まった。その後の日本人の政治、道徳思想の手本となった。


平家家物語が仏教、因果応報なら、太平記は宋学の影響から儒教の君臣という名分が重視
される。しかしそれとともに日本独特な忠臣文化がある。特に太平記読みは日本の忠臣が
デフォルメされる。 江戸時代は家康の政策により、儒教が取り入れられたと言われるが
、実際の日本人の考えは太平記読みの思想に近いという。

その思想は、たとえば君主の上になる国家(公)があり、民のみならず君主であっても国家
のためであること。よって君主は民のために働くことが公儀である。仁政をめざすべき。
仏教、儒教などの学問にとらわれるのではなく、忠義のため、仁政のために、すなわち国
のための実際的な知として活用して意味がある。著者は、このような太平記読みの思想を
、それ以前の中世の思想と対立させる。中世の思想は顕密仏教を中心とする宗教的な思想
であるという。