客:あと興味深かったのは『文学界』の蓮実重彦だろう。80-90年代は辛辣な批判が多かったとい
う印象があったろう。周りに浅田や柄谷がいたせいかもしれないけど。敬意を払う一方で「天皇」
だとか、皮肉が多い。ちょっと引用すると
《浅田 (『言語にとって美とは何か』について)読解不能でしょ。
蓮実 読解不能っていうか、ごく単純に書物であることの必然性が分からなかった。とにかく、読者
の方が著者の気持ちをくんだり、あれこれ配慮を示さないといけないという点で、何とも天皇制
的な抑圧を感じたことはたしかです。そして個人的には、そうした抑圧を倒錯的に愛してみようと
自分にいいきかせてみたんです。》(『近代日本の批評 昭和篇 下』107頁 講談社文芸文庫)