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主客:
客:なるほどねえ。そこでやっぱり吉本の批評や思想というのが他の哲学書などとは違うニュア
ンスで読まれてきた。そのことは重要で、あの膨大な残された書物というのが、初期の詩魂の延長
に位置する。彼は言葉をつむぐことで闘ってるという意識は最期まであったと思うけど、その闘い
というのはやっぱり初期の詩が原点だと思うんですよ。あれはまさに人類史への反抗であり闘争
であったし。彼には〈本当のこととは何か〉という問いが最期まであったと思うけど、それ自体、〈
僕が真実を言えば世界は凍る〉という〈真実〉への〈妄想〉の延長ですよね。吉本の批評でも思想でも
、やっぱりその特殊といえば特殊な感性の産物だと思うんです。ただ勿論あの理論的著作の場合、
それは不要といえば不要かもしれない。だとすれば我々にとっては、吉本の文学理論を借りれば、
吉本の理論的著作よりもそれを書いた吉本の方が豊富で巨大。ということになります。だから人
が言うほどは重要視はしてないですね。あれを読まずに吉本は語れないとまでは。追悼文でもど
ちらかといえば思想家としての大きさで語られていたような気がするんだけど、あの思想の出発
点はあの膨大な詩であり書き続けた情念だとしか言い様がない。あの詩が解らないとあの思想的
生涯は掴めないと思うけどなあ。でも質問人さんの発想も解るので、それはそれで尊重もしてま
す。頑張って読解してほしいですね。