吉本隆明は死んだ

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91考える名無しさん
 幻想というタームを使ったことの問題は吉本自身も感じており、『吉本隆明が語る戦後55年E』
の中で以下のように語っている箇所がある。

《個人幻想とか対幻想とかは、特に個人幻想は、個人の錯覚や幻覚という意味にとられるかもしれ
ませんが、それとはまったく違う意味なんです。個人幻想というのは、個々の人間の精神現象とそ
の集まりのことを言っているわけで、共同の場合や制度的な場合と比較したらまったく違う意味
になっちゃいます。だから、本当は違う言葉を使わないといけないんでしょうね。僕は勝手に使っ
ちゃっているわけです。》(66頁)

 吉本自身がこのように幻想という言葉の問題は自覚はしていた。それは翻訳者の苦労や、海外の
思想家とのやり取りで感じたことかもしれない。もしも将来、吉本の著作が廣く海外に輸出される
企画が起こった場合には、過去に犯した失敗を無駄にせず、吉本の思想を廣く全思想史に位置づ
けることのできる人と、語学に達者な人が協同で取り組むべきだと思います。吉本の翻訳には
両方の力が必要でしょう。