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考える名無しさん:
吉本の思想の根本には現実世界への根深い不信と、拒絶の心性がある。同時に吉本が
愛惜せずにおられない人々、それを歴史に一切名前を残さずに生きて死んでいく無名の
大衆、とも言ってたと思うが。吉本の初期の詩にはそれらの心性が沸騰して描かれてい
る。後の批評や思想にもそれは根底に流れている。その心性が掴めれば吉本の思想の核
は掴んだことになると思う。それと、何故幻想というタームか、ということだが、これは
他の言葉でも言い換えはあると思うが、敢えて言えば、人間という存在そのものへの
実感、或いは予感から来ているところがあるんじゃないかと思える。吉本の世界観という
のが実はそこに陰を落としていることを感じる。もうひとつは『共同幻想論』の序になって
いるインタビューで、幻想という言葉を使うのは、上部構造でもいいんだけども、上部構
造という言葉には手垢がついているので使わない、と述べてる。角川文庫版『共同幻想論』
の冒頭にあるし、たしか河出書房版でも勁草書房版でも序に述べてある。何故幻想なのか
、というのは吉本自身の言葉はそこで述べてある。