マルテイン・ハイデガー、今。

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636考える名無しさん
 ついでに創文社版全集65巻『哲学への寄与論稿』翻訳について一言言うと、あの本の表紙の裏の
辺りに次のような言葉が日本語とドイツ語で書かれてる。

《日本版ハイデッガー全集のドイツ側代表編者ハルトムート・ブフナー博士へ 心からの追悼と
深い感謝の意をこめて この訳書を献ずる 訳者》

 これがどういう意味かというのが巻末の訳者後記の末尾562頁にある。それによると、『哲学への
寄与論稿』翻訳は《数年にわたる読み合わせ》のあと、《1997年秋に》開始された。日本側翻訳者は
大橋良介、秋富克哉。《2001年の暮れに、いちおう全体を訳し終えた》。その後、《ふたり別々に全体
を原文と照合し、その結果を交換して、訳語・訳文の統一をはかった。この作業には1年余りを
費やした。》そのような共同作業が進み、《本書の第3校の校正中の2004年7月30日に、》《日本版
ハイデッガー全集の編者のひとりであり本巻のドイツ側の協力者でもあるハルトムート・ブフナ
ー氏は》急逝された。享年77歳だった。元々大橋と秋富はドイツで別々にミュンヘン大学でブフナ
ー博士の演習と指導を受けていた。《本書の翻訳作業においても、ブフナー氏には、マルテイン・
ハイデッガーの直筆原稿との照合を初めとし、重要な訳語の決定や難解な個所について、絶えず
有益な助言をいただいてきた。訳業がほぼ終わった時点での氏の急逝に、驚きと悲しみを覚える
とともに、また深い感謝の念を改めて抱く次第である。》

 足掛け7年半の作業の末完成。その間翻訳チームの一人は完成間近に急逝。という経緯に、この本
の日本版完成にむけての翻訳者の苦労と執念を感じずにいられなかった