ウィトゲンシュタインと心

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776考える名無しさん
 ヴィトゲンシュタインの著作に見られる一面で、今後ますます注目を集めることが確実なのは、そ
の言語である。かれがいつの日か古典的なドイツ散文家の一人に数えられないとしたら、それは驚く
べきことであろう。『論考』の文学的な味わいは余人に気づかれずには済まなかった。『哲学探求』
の言語も同じように見事である。その文体は簡潔明快、構文は確実流麗で、そのリズムにはよどみが
ない。その形式は、あるときには問いと答えから成る対話体であり、あるときには『論考』の場合
のように、アフォリズムに擬縮する。あらゆる文学的装飾、技術的な専門語ないし術語が驚くほど欠
除している。慎重な抑制がもっとも豊かな想像と結合し、自然な持続と心を驚かすような変化とが
同時に印象づけられて、人はウィーンの生んだ他の天才の偉大な作品を思い浮かべることであろう。
(シューベルトはヴィトゲンシュタインの好きな作曲家であった。)

ゲオルク・ヘンリク・フォン・ウリクト「ヴィトゲンシュタイン小伝」