【Justice】ハーバード白熱教室2【Sandel】

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言語も共同体主義者お得意ネタの一つだけど、そもそも言語は思考以前にコミュニケーションの道具として
生まれたわけで、相手がいなければ始まらない。それなりの数の構成員を備えた、それなりの期間安定して
存在してきた共同体内でしか、育まれえない。人間が個人としてある日パッと言語を思いつくということは
ない。その他諸々の社会材も、共同体があってはじめて齎(もたら)されている。

共同体が無ければ人間個人も存続し得ない。しかし、共同体を存続させるためには、人間個人の自由をある
程度は制限せざるをえなくなる。それが問題となるところ。80年代頃まで共同体主義者は多文化主義を盛んに
押していたわけだけれども、例えば米国内のある少数民族の共同体が消滅の危機にあったとする。その共同体
の構成員はみんな帰属心も薄く、どんどんその他アメリカ人と結婚し、民族語も覚えようとせず流暢な英語
だけを話すよう努め、現代アメリカ社会に同化しようとする。そこで言語だけでも後生に残したいと二言語
教育を施そうとしても、大して役にも立たない言語を学ぶのに余計な勉強時間を割いては不利だ、英語だけで
いいと子供たちが言い出した場合にどうするか。子供たちがその共同体で生まれ育ったことにより大きな
恩恵を受けているとしても、子供たちの自由を制限し民族語教育を強制することは正当なのか。