坊さんじゃねえし。浄土真宗のですら。
肉食+妻帯だ。肉食と妻帯でワンセットだ。
どっちもおんなしようなもんだという、たま〜に露骨な仏道の見解の一つだ。
でもこれも決していい加減なもんじゃない。
日本では、肉用獣の屠殺業が昔から卑しめられていた。
ケガレ信仰によるんだが、実はこの典拠の一つになっているのがスサノオ神話。
アマテラスの機織部屋に逆剥ぎにした馬の皮を投げ込んで女中をショック死させ、
アマテラスを天岩戸に閉じこもらせた。この話が元になって屠殺業、皮革業、
精肉業などが卑しめられるようになって、いわゆる部落差別となった。
それほどにも日本での肉食には、本来は重たい意味がある。
屠殺の卑しみが国家創世神話とすら結び付いている、非常に稀有な事例。
妻帯は僧侶故の禁忌であるにしろ、衆生ですら憚っていた肉食にも活路を与えた
親鸞聖人の悪人正機は、日本ならではの被差別階級解放の意義も持っている。
廃仏毀釈の国家神道によって、江戸時代まで真宗などの庇護下にあった部落階級が
一挙に大差別を受けることとなり、その陰惨さは島崎藤村の「破戒」などに詳しい。
これは明治以降の話。大昔からずっとそうだったのではなく、明治以降になって
初めて噴出し始めた大問題。屠殺業を擁護する手立てを失ったが故の惨事。
仏道が明治以前並みに復旧することで、部落差別が緩和されるという効果もあるわけ。