◆決定論:脳は物質だから意識は必然に過ぎない94◆
けんじが感心したように一人頷く。
「うーん、これじゃあ見えないよなぁ」
たかしが一度手を離し、不満足そうにあやかを睨んだ。
正直、あやかを睨んだところでどうにかなるわけでもないのだが。
「なあ、あやか」
こっちまで恐ろしくなるほど、不気味な笑みを浮かべながらたかしはあやかのへその辺りを撫で回した。
「あやかの全部、見たいなぁ、奥の奥まで、見たいなぁ」
「や……やぁや!それだけはやめてよぉ!」
あやかは、ようやく意味が理解できたのか、いままで異常に泣き叫んだ。
それを確認して、たかしは満足そうに頷くと、俺達に指示をだした。
「前進〜〜!」
指示に従って俺らは、あやかの膝をあやかの腹につくくらいまで押し当てる。
M字開脚。だが、それはさっきと違いパンツのような遮る物の何もない、生の物だった。
「綺麗なピンク色だねぇ」
否が応にも、性器はパックリと割れている。
目に飛び込むサーモンピンクは、俺の頭を混乱させるほどに綺麗だ。
「ここ雑誌でもモザイク掛かってる部分だぜ」
俺の隣の人間が、興奮に興奮を重ねた様子で言う。
そう、そこはもう俺らにとって本当に未知の世界だった。
どれがクリトリスで、どれが尿道で、どれが膣か、まったく検討もつかない。
ただ、アメリカに初めて降り立ったコロンブスのように、見るものすべてを吸収するだけだった。
「……………」
あやかはショックを受け過ぎたのか、まったく声を発しもせず、ただ天井を見上げていた。
さすがにやり過ぎたのかもしれない。
俺はまた罪悪感が湧き上がるのを感じた。
「なあたか……」
「たかし、これはなんだ?」
手は全部ゆうすけに任せ、たかしの側に回ってきたけんじが、何かを指してたかしに聞いた。
けんじの指さす先には、少しだけ黒ずんだ、ちょうど風船の口のような物がある。
なんだろう。膣は、性器にあるというし……俺は頭を捻らせた。
「下半身のもう一つ穴か、おそらくこれは『肛門』だな」