298 :
純一:
続きです
>そこでこの狐は、狐の世界から完全に身を引いて、
>自分だけの〈穴〉を掘ることに決めたのです。
>この狐は、罠に落ちるたびに、信じられないほどの手酷い経験を
>身をもって味わいながらも、罠と罠でないものを区別できないと
>いう驚くべき欠陥に悩まされていたので、まったく新しい考えを
>思い付きました。これは狐たちがまだだれも聞いたことのないよ
>うな考えでした−−この狐は自分の〈穴〉を、ひとつの罠として
>作り上げたのです。そしてこの狐は穴の中に潜み、これを普通の
>穴のようにみせかけました。悪巧みからではなく、罠はみんな他
>の狐の穴だと信じていたからです。そしてこの狐は、自分なりに
>悪賢くなり、自分のために作った穴、自分だけにぴったりと合う
>穴を、他の人々にも合うように支度しました。しかしこれも、罠
>というものについての無知を示すものでした。罠の中に狐が座っ
>ているのだから、他の狐はこの罠にはかかりようがないのです。
>これにはこの狐もうんざりしました