俺とお前は限りなく広がる草原にいた
数限りない石でずっとずっと埋め尽くされていた
草と石のコントラスト
それが傾きかけた夕陽と混じり合っていた
「ここはどこ?」
「俺が知るか」
「なんでこんなとこにいるのかな、私たち」
「うん。…これ、墓か?みんな」
「誰のお墓だろうね」
俺は一つの石に近づいてみた
何も書いていない
これだけの人が命を落としたのか…
なぜ、名前も何も書いてないのかな?
俺が首をかしげていると服の袖を引っ張る手が
振り返るとお前はしゃくりあげていた
「どうしたんだよ」
「わかったの」
「何が?」
「これはね、恋のお墓なの」
俺は言葉を失って石の広がる草原に向き直った
まさか、なんてとても思わないし言えない
その通り、だと思ったところでそれを口にしてどうする?
なるほど、とわかったみたいに言うか?
俺はお前の賢さに舌を巻いていた
俺にもそれとわかったのだ、確かにこれは恋の墓たちなのだと
「わたしたちもいつかここに埋められるの?」
「……」
「そうなのかな…」
立ち尽くしながら俺は、何か言わなくちゃ、何か言わなくちゃ、
そればかり考えていた
ここから逃げる?お前を連れて?
いや、それも違うと思った
お前を泣き止ませる、言葉をかけてあげなくちゃ
そしたら俺たちはここを去ることが出来る
「…もう泣くなよ」
「…だって、だって悲しすぎるよ」
「ずっとずっと、お前が好きだよ」
「…ここにもう、来ることはないの?」
「ああ。だから、笑うんだ」
「……」
「笑うんだ」
「…えへ。そんな、笑えって言われてもそうは笑えないよ」
それでもお前は涙混じりの笑顔を見せた
「あのさ」
「なに?」
「お前は俺のこと、好きなの?」
「…えへ」
「ちぇ。ずるい女ってお前のことだよな」
「…えへ。……しゅき」
「…ん。いいよ、それでさ」
俺たちは抱き合った
夕陽が沈んで星が見えるまで
「…一番星だよ」
「うん」
「一番星は心の清い人しか見れないんだって」
「金星を見つけようと思って張ってれば誰だって…」
「ぶっとばすわよ」
言うが早いかお前は俺のみぞおちにパンチをくれた
で…
夏の朝だった
俺は目を覚ました
すぐ横でお前はまだ眠っている
つん、と丸い鼻をつついた
ん、と寝ぼけてお前はまぶたを開く
「なによぅ。なんで起こすの」
「夢を見たから」
「へぇ。どんな?」
うん。この話はここまで