禁欲して頭がボーッとしてる時だといい話が書けるのかなー…などと
思ってたのです…そんなわけで今は割と醒めてるのですが…あんま
ブランク空けたくないので書いちゃいます。つまんなかったらゴメソ。
ペルセウスはピンチだった。足を滑らせて崖に宙吊りになっていた。
突然、綱が宙を飛んできた。命からがらそれにすがって上へと辿り着くと、
その綱を引いていたのは三人の女だった。皆、白い仮面を被っていた。
仮面は髪まで覆っていた。そこには、無数の蛇がかたちどられていた。
「ありがとう」とペルセウスは言った。命の恩人をいきなり殺すのは
ためらわれたのだ。
仮面を外すと、三人三様の美しい年頃の乙女たちの顔が現れた。
名前を教えてもらった。三人は姉妹で、上からティシフォニー、
メデューサ、メゲーラといった。ペルセウスは、メデューサに
一目惚れしてしまった。
ペルセウスは、三人の家に招かれた。上と下の娘はどこかへ行ってしまい、
メデューサだけが残った。茶を出され、ペルセウスは(ギリシャ時代には
茶は無いか^^;まあ雰囲気^^;)一息入れた。そして、言った。
「俺、あんた達を退治しに来たんだよね」
メデューサは可愛く、そして長く笑った。笑い終わると、きらきらした
瞳でペルセウスを見た。ペルセウスは慌てて顔をそむけた。
「どうしたの?」
「どうしたの?だ?今、俺を石にしようとしただろうが」
メデューサは、また、笑った。
「いらっしゃい。私たちがしてきたことを見せてあげる」
ペルセウスはメデューサに連れられ、林を抜け、近くの野原に出た。
「!」
そこには無数の白い石像があった。皆男の像だった。
「こんなに…」
ペルセウスは悲しみとともに剣のつかに手を掛けた。
俺はお前たちが醜い老女だと聞いていたが、そうじゃなくて
面食らった。メデューサ、お前には心を奪われてしまった。
だが、どうやらやはりお前たちを殺さなければなるまい。
これだけの命を奪ってきたお前たちなのならば。
メデューサは、ペルセウスの考えが判ったみたいだった。
「私たち、誰も殺していないわ」
「なに」
「あなたも、他の人も、はやとちりよ」
そのとき、遠くの方で二人を呼ぶ声がした。
ティシフォニーとメゲーラが、手を振っている。
よく見ると、二人は白い粉まみれだった。そして、手にはのみと
ハンマーが握られていた。
「わかる?」
「?」
「私たちは、彫刻家なのよ」
(落ちがばれても話は続きます…)
四人はアトリエにいた。作りかけの像。まだ手付かずの大理石。
「しかしだな、可愛い子ちゃん方。それじゃ俺の立つ瀬が無い。
勇んでやってきて悪い奴はいませんでしたじゃ俺は笑いものだ」
「そりゃあんたが悪いのよ。成り上がりたくて…」
「シフォン姉さん」
メデューサがいさめた。
「ペルセウスさん、しばらくここに留まって善後策を考えては?
何かいい知恵が浮かぶかもしれませんし」
ペルセウスは、それに従った。
それから一月というもの、ペルセウスはメデューサの後ばかり
追って過ごした。そしてメデューサも、それを嫌がっていなかった。
というか、実のところ、ペルセウスが閃いた時、ペルセウスは
メデューサに膝枕をしてもらっていた…のだ。
「彫るぞ」
「何を?」
ペルセウスも、芸達者な男だったと物の本には記されている。
ペルセウスは、醜い老女の首を瞬く間に彫り上げてしまった。
その髪は、無数の蛇だった。
「大きな鏡はあるか」
「ええ。でもなぜ?」
「鏡で自分の邪視を見てしまったことにするんだ」
「…頭、いいのね」
「本当にあの男についていくの?」
「ええ。シフォン姉さん、メグ、元気でね」
「詐欺師よ、はっきり言えば」
「抜けてる人が好きなの、わたしは。きっと」
ペルセウスは、退治した(ことにした)ゴルゴンの首と嫁さんを
貰えて有頂天だった。二人と二人は別れてそれぞれの家路につかんとする。
メデューサは尋ねた。
「でもわたしのことはみんなにどう話すの?」
「とらわれていたアンドロメダ姫を助けたとでも言うさ」
「アンドロメダ姫?誰それ」
「今作った」
「どこまでも適当な人なのね…」
そう言いながらも、メデューサは眩しそうにペルセウスを見ていた。