人はなぜ人を殺してはいけないのだろう?

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 話の流れを中断してすいません。>>451で永井均氏の文章を引用した者です。
引用の仕方がまずかったせいで、またも毎度さんに誤解を与えているようなので、
補足させていただきます。
 『なぜ悪いことをしてはいけないか』には、永井氏の文章が3本入っていますが、
引用したのは1本目の冒頭、話の導入部です。その後、毎度さんの批判のような
論点も含めて道徳系譜学的議論等が展開され、他の論者との相互批判なども
繰り広げられるわけです。引用部は氏の「子供の頃に抱いていた実感」を述べた
だけのもので、引用文自体を逐語的に批判されても(永井氏に対する批判としては)
あまり意味がない、ということをお断りいたします。それと「自由」という言葉は
肯定的な意味でだけ使うべき、という議論にはあまり賛成できませんが、「勝手」と
言い換えても、論旨に変わりはないと思われます。要するに一切の肯定否定以前の
「根源的自由」が問題になっているわけですので。「崇高な」というのは、単に
感じ方の問題です。「根源的」と言い換えた方が、誤解が少ないとは思いますが。
 で、最大の誤解は、毎度さんは永井氏が何かの「社会思想的」「政治的」な議論
をしている、少なくとも、哲学的な議論にまぶして何らかの思想的傾向を助長しよう
というような意図を持っている、と解釈されたようですが、それは全く違います。
(つけ加えますと、このスレの他の人にも、そういう意味の「悪意」があるとは
思えません。少なくとも私には全くありません。)
 およそ、そういうレベルの議論ではないのです。そのことをわかっていただくため
(だけ)に、同じ論文の末尾に近い、氏が自分の意図らしきものを語っている部分
を引用させていただきます。なお、逐語的批判は御自由ですが、これだけ読んでも
永井氏の「哲学」の趣旨は余り理解できないだろうことをお断りします。私などは
全文を何度読んでも十分に理解できませんので(笑)。氏が何かの「悪しき政治的・
社会的意図」を隠して議論しているのでないことだけ感じていただければ幸いです。
575430 (引用文):02/12/21 21:49
『 道徳が有効であるためには、それは神聖にして不可侵のものでなければならない。
だから、なぜ悪いことをしてはいけないのか、なぜ道徳的でなければならないのか、
といった問いに「かくかくしかじかのため」といった明快で単純な答えはあっては
ならないのである。そんなものはすぐにかんたんに論駁されてしまうからだ。今日、
意外なことだが、道徳の権威を守る唯一の砦は哲学である。道徳が哲学的に基礎づけ
られると言いたいのではない。道徳系譜学的知見をも越えて、道徳についてどこまで
も真剣に哲学し続けるという意志だけが、唯一、道徳の権威を保持しうるのである。
それは、はるかなむかしにあのソクラテスが考え出し、今日まで受け継がれてきた
道徳擁護の特殊な、しかし究極的な方法である。そこでは道徳はどこまでも疑われて
よい。いや、どこまでも徹底的に疑われなければならない。その疑いを真剣に受け
止め、さらにそれについてどこまでも考え続けようとすることによってのみ、その
意志の真摯さによってのみ、道徳の権威は保ち続けられるのである。
 だから、もしいま、十三歳の中学生に「なぜ人を殺してはいけないのか、そもそも
なぜ悪いことをしてはいけないのか」と本気で問われたなら、「道徳的に」(原文は
傍点強調)正しい唯一の答えは「それについていっしょに哲学しよう」である。
それ以外の答えはまやかしである。」』
576430 (引用文):02/12/21 21:50
 なお、私は永井氏には相当の「共感」を覚えておりますが、理由は、永井氏が
幼少の頃に抱いていたという「疑問」を、私も中学生くらいの頃(もう何十年も
前ですが)から抱き続けているからです。そして、永井氏の文章を読んだときに
「私と同様の疑問をここまで徹底的にごまかしなしで考えている哲学者がいるのか!」
と新鮮な驚きを受けたことも事実です。ちなみに、永井氏の議論がすべて「正しい」
などとも、毛頭思っておりません。
 肝心なことですが、私は毎度さんの議論には賛成こそすれ、全く反論する気など
ありません。およそ、「人を殺してはいけない」という一般的規範を立てること、
そしてその規範の効力を強めるよう努めること、について、何らの反対もありません。
恐らく永井氏も反対しません。というか、反対の人はほとんどいないのではないで
しょうか。それを踏まえた上での「なぜ人を殺してはいけないのか」という「疑問」
だということをご理解ください。
 ただし、>>80で述べられている内容は、永井氏(少なくとも私)の問題意識とは
あまり関係がないと思われる、という点だけ指摘させていただきます。