901 :柄谷ちゃぶ台返し声名 :02/10/21 19:58
事情がどうであれ、私がこれまでQに関してあやまった幻想を与えてきたことは
確かである。したがって、私は私の不明をお詫びする。
とはいえ、それはLETSそれ自体が不毛だということを意味するものではない。
NAMは、その「原理」において、リントンの考案したLETSを採用することを決めて
いる。ただし、LETSをどのように実現するかについては、決まっていない。それは
会員の創意工夫、試行錯誤にもとづくのである。そして、Qは失敗であった。
しかし、Qの失敗の経験は、今後のLETSをやっていく上で役に立つ。NAMは、これ
まで、たえず、失敗の経験を認識としてプラスにしようとしてやってきたが、市民
通貨についても同様である。すでに、NAMの内部で、新たな市民通貨の試みがある。
たとえば、湯本氏やNAM中部の人たちは、地元の経済に根ざした地域通貨を始め
ている(
http://www.100watt.jp/)。これは、お札のほかに、簡単な口座決済ソ
フトを使ったものである。これは各地で使える。しかし、技術者出身の湯本氏は、
技術などたいした問題ではないといっている。技術なら、インターネットがそもそ
もそうであるように、資本制企業が開発した最先端の成果を利用すればいいのだ。
湯本氏が強調するのは、むしろ生産者の協同組合を創出することである。
私自身は、原祐人氏らが構想する市民通貨Lに大きな期待を抱いている。これは、
もう私などが宣伝してまわる必要がないような、実現性の高い、画期的な案である。
どんなきびしい商売人でもこれを無視しないだろう。あとは、どのような技術を採
用するかが問題なだけである。
しかし、これらさまざまなLETSは、対立したり相克したりするものではない。
LETSを生活の現場において流通するようにするための工夫は、いくらあっても構わ
ない。また、それらは、いずれも円に対応する以上、互換的であり、いずれ結びつ
く。だから、このような多くのLETSの企てが、NAMの内外から生まれることは歓迎
すべきことである。
私は、新しい市民通貨についての会合が、あちこちで開かれることを希望する。
私はNAMの一会員として、東京、名古屋、京都、神戸、その他、実践的な試み
があるところならどこにでも、話しに行くつもりである。
2002/10/05