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透明なアクリルの仕切り窓から、男が一人、閉ざされた室内を覗いている。
狭い部屋の中には、うら若い乙女の姿があった。彼女は突然この場所に連れてこられたのだった。
黒目がちの大きな瞳が不安そうに左右に揺れた。
細く長いしなやかな手足と、ぷりぷりとしたナイスボディー、艶やかに輝く透き通るような肌。
男の欲望を煽りたてる、人間離れした美しさだった。
彼女は困惑しながらも、脱出口を探すためにそろそろと身を起こした。
音を立てないよう、ゆっくりと歩を進める。
辺りを見回しても、見覚えのない室内には灰色の円形オブジェが置いてあるばかり。
と、ぞろり、と床から何かが起き上がった。
それまでは単なる置物にしか見えなかったオブジェが、突然大きく弾け、
粘液に塗れた無数の触手をごぼごぼと吐き出してきたのだ。
互いに絡まり合い、鞭のようにしなりながら狭い部屋の中を四方に向かって伸びて行く。
彼女は悲鳴を上げた。
悲鳴に反応したのか、触手は向きを変え、一斉に彼女に襲いかかってきた。
ぬらりと肌に触れたおぞましい感触に、彼女は思わず飛びすさる。
が、逃れた先にも、ゆらめきながら透明な腕が伸びる。
後ろは壁、もう逃げ場はない。
ぬらつく触手の一本が女の足に絡みついた。
続いて別の一本が、更に数本が足に巻き付き、女の動きを封じた。見る間に全身を触手が覆う。
「いや、いや……ううっ、やめて」
首筋を嬲られて女は叫び声を上げた。
数え切れない触手に搦め捕られ、どうやっても払いのけることができない以上、
悲鳴を上げる他に為す術はなかった。
「ああ、そこは……だめ、よう……」
弾けそうな若い体を、ぴちぴちの肌を、粘ついたミミズ状の管がいやらしく這い回る。
女は逃げ場を探して手足をばたつかせ、ふりほどこうと身をもがく。
「あぅ、あっ、あんっ」
足の付け根に到達した太い触手がむりやり細い隙間を押し広げた。女はいやいやをするが、
粘液で滑る侵入者を押しとどめることは出来なかった。
「や、やめてえ、お願い、だれか助けて……あううっ」
足の付け根の繊毛を楽しげにくすぐり、柔らかなヒダをかき分けて、邪悪なモノが割り入ってくる。
粘つく先端が蛇のように互いに絡まりながら、無理に隙間を広げて、敏感な奥へと潜り込む。
「ら、らめえ……そんなの、らめ……」
女が丸まった体をびくんびくんと痙攣させた。もはや触手の為すがままだった。
ぱこん、と後頭部に軽い衝撃があった。
振り向けば、丸めた新聞紙を手に、白衣を着た鈴木嬢が立っていた。目が怖い。
「い、いつから……」
「あんた馬鹿じゃないの? いい年して触手だの、らめえー! だのって。――ちょっとどいて」
女史はあからさまな軽蔑の眼差しで、足でどん、と乱暴に椅子を横にどけると、
隣に並んで水槽の中を覗き込んだ。
何のことはない、イソギンチャクとカラフルなエビが水流に負けずに元気に動いているだけだ。
「うん、いい調子で共生できてるじゃない。あとさあ、これ、オトメエビじゃなくてモエビだから」
「萌え美ですか。うん、それもなかなか……」
言い終わる前に、もう一度頭を新聞の筒で殴り、彼女はさっさと出て行ってしまった。
つくづく思う。3次元の女性は全くもって難しい、と。