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子離れできないババアの狂態は見苦しく、思わず殴り飛ばしたくなったが、
報酬額と依頼内容が気に入ったので自重することにした。
ようするに俺が囮になって通り魔の徘徊する街をうろつき、襲い掛かってきた
犯人を返り討ちにしてくれということだ。
俺にとってはまたとない依頼だ。
普段は物静かな俺だが、リアルファイトを開始すると体中が興奮状態になり、
悦楽の中に全身が溶けていくような感覚を覚えるのだ。
相手は強ければ強いほどいい。そしてその相手を叩きのめした瞬間こそが
何よりの至福だ。
今度の相手は人間離れした通り魔。
彼はおそらく強者を求めて人を殺し、俺も強者を求めて依頼を受ける。
似た者同士のふたりだ。
今度の仕事は生涯最高対決のファイトになるに違いない。
そんな期待にわくわくしながらこの街に引越し、人通りのない夜道でこれ
見よがしにトレーニングを繰り返し、時にはどこかで見ているかもしれない
通り魔に強さをアピールするためにゴロツキたちを叩きのめした。
そのあげく網にかかったのが、この小娘だ。
逃げ足だけは速く、今までに2度取り逃がしたがもはや捕まえる気力すら
起こらない。
「や、やったわね」
小娘が手首を押さえて立ち上がる。
いや、俺は何もやってないし。
まったく役者不足もいいとこだ。
俺は柄にもなくため息をつきそうになった。