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「……すいません、三枝さん」
「由枝」
「由枝……その、あの、さ……聞きたくないけど、聞きたくないけどどうしても
聞かなくちゃいけない事が、今目の前にあると思うんだ、俺」
「なによ。ま、別に聞いてあげなくもないけど?」
「……お茶から、何か、黒くて長い物が見えるんだけど、それって……」
「あたしの出したお茶が飲めないって言うの? へえ……そう、飲めないんだ……」
「そうじゃなくて、その黒くて長くて、やけに艶めいた、丁寧にトリートメントや
コンディショナーでケアしてるっぽい感じの物体は何なのかなぁって!?」
「なによ、見ればわかるでしょう」
「……見た、まんまなんだ」
「疑問は解消した? じゃあぐいっと飲んでね、ぐいっと。ま、別にあたしは
アンタに飲んで欲しいわけじゃないけどね。でも出すんだから飲みなさいよ」
……やっぱりコレ、髪の毛なんだ。髪の毛が、それこそ容量の三分の二くらい
入ってるお茶なんだ……っていうかもうこれお茶じゃないよ、髪の毛だよ!
「飲まないの?」
「飲みます! 飲ませていただきます!」
「そんなに飲みたいなら、飲ませてあげるわよ。じゃあ、はい」
俺は目を瞑って、息を止め、それがやってくるのを待った。
「……んぐぅっ!?」
か、髪が喉に詰まるっ!? 幸いというか何というか、お茶と呼称している
割りに、そんなに熱くはなかったのでやけどをする事はなさそうだが……
「……うふふ……これで窒息したら、あたしが人工呼吸してあげるから、安心してね」
「んごぉっ!?」
何か結構ヤバイ呟きが聞こえた気がしたんですけどっ!?
俺は背筋を伝う悪寒とも戦いながら、必死で髪の毛を……お茶を飲み下した。
「……ぷはぁっ!」
「……ちっ」
……舌打ちですか、おい。
甘かった。少しいいかも、とか思ってた俺、甘すぎて最近離婚した某井戸田
さんにツッコミ受けるくらい甘かったよ……つくづくそれを思い知らされた。
「な、なあ、由枝」
「おいしかった、お茶?」
「あ、ああ……美味しかったと、思う」
「ちょっと容れすぎちゃったから、おかわりしたければしてもいいわよ」
「あ、ああ……と、とりあえずは、いいよ。ありがとう」
引きつってはいるけども、こんな状況で笑える俺って、実は結構凄いのかもしれない。
「ところで……」
俺は何とか話を変えようとした。とにかく、このままだと危険だ。何をする
にしても、とりあえず身体の自由は確保しておかなければ……。
「ああ、そうね。ごめん、忘れてたわ、あたしとした事が」
そう言って彼女は傍らにあった机の引き出しを開け、そこからカッターナイフ
を取り出した。まさか、何も言わなくても俺の言いたい事を察してくれたのか!?
そんな俺の考えは、またしても甘かった。甘すぎた。太ってしまうくらいに
スリムアップシュガーを入れた紅茶レベルに。