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気づけば、俺は見知らぬ部屋にいた。
「あの……なんで俺、君の家に?」
俺は彼女を刺激しないように、笑顔すら浮かべながら尋ねた。
「なに? あたしの家は貧相で兎小屋みたいでみすぼらしいかしら?」
「いや、そういう事じゃなくてさ……」
……なんでそんな反応が返ってくるんだろう。頭痛い。というか、頭が
痛いのは最初からだ。何しろ、温かい物が額の辺りから頬辺りまで
垂れてるのを感じるのだから。……当然、額、切れてるよな、これ。
「どうして俺が今ここにいるのかなぁ、と」
「べ、別にあたしが連れて来たかったわけじゃないんだから!
そう、たまたまよ、たまたま! たまたまアンタが歩いてたの見かけた
から、たまたま持ってたとんかちで」
「とんかちを? たまたま?」
「そう、たまたまよ、たまたま! 別にアンタをあたしの部屋に拉致監禁して、
それで思うがままにしてやろうとか、そんな事思ってないんだから!」
「という事は、この縄も?」
「そうよ! たまたま持ってただけ! 別にアンタをその縄で縛ってここまで
連れてきて、それで椅子にくくりつけて動けなくしてやろうなんて、全然思って
なかったんだから!」
……肉体的な意味でも痛い頭が、精神的な意味でも痛くなってきた。
大声でわめきちらして、何もかもをなかった事にしてしまいたくなる。
彼女は、俺の同級生。三枝(さえぐさ)由枝(ゆえ)と言う名を持ち、端整な
容姿と、一通りなんでもできる優秀さをもった彼女は、だがしかし、とんでもない
欠点故に、全校に……もとい、ここら一帯全方位にその名を知られている……
そう、噂されていた。
そう、あくまで噂だ。今この時まで、俺も噂だと思っていた。優等生で
人気者な彼女に対する、嫌がらせのような噂でしかないと。
だが、現実は非情である。
たまたまとんかちを持ってる女子高生がいるか? 否。
たまたま荒縄を持ってる女子高生がいるか? 否。
たまたま持っていたとんかちで同級生を殴り、荒縄でふんじばって家に
連れ込み、椅子にくくりつけて監禁する女子高生がいるか? ……。
……いるんだよな、目の前に。